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岩崎書店 えほんができるまで 作家インタビュー岩崎書店様 2018/02/01
1960年代、「一流マンガ家とデザイナーが作った最高のマンガ!!」というキャッチコピーと共に刊行された「ポニー・ブックス」シリーズ。
そのラインナップには、和田誠さん、馬場のぼるさん、柳原良平さん、長新太さんなど、長く絵本業界をけん引している面々が、名を連ねていました。
2017年10月、「ポニー・ブックス」シリーズが、当時のビジュアルそのままに、復刻され、話題となりました。
しかし、この復刊にはとても長い道のりがあったそうなのです。
●復刊の企画が立ち上がっては消えていった50年間
「ポニー・ブックス」シリーズが刊行されたのは、1963年から1965年の約2年間。その後、約50年の間に作品は徐々に姿を消し、復刊の計画が立ち上がっては、立ち消えるという状態が長く続いていました。
その理由のひとつが、製本・印刷に関する問題。 60年代の「ポニー・ブックス」シリーズは、今の絵本とは異なる「合紙製本」と呼ばれる製本方法で作られていました。「合紙製本」とは、片面ずつ印刷された厚手の紙を糊付けして貼り合わせ、本の形にしたもの。 この製本方法を、今の製本機で再現するのが、とても難しかったと、「『ポニー・ブックス』シリーズ復刊プロジェクト」を担当した岩崎書店の佐々木さんは言います。
佐々木:当時の「合紙製本」は1冊、1冊、手作業で貼り合わせていました。
今、同じ工程を再現した場合、印刷費や製本代に相当なコストがかかってしまいます。しかし、どうしても「合紙製本」独特の風合いや、当時の印刷の色を読者の方に感じてほしいと、印刷・製本会社さんにお願いをしました。 ありがたいことに、印刷・製本会社さんが、機械で「合紙製本」を再現することに意欲を燃やしてくださり、この復刊プロジェクトをスタートさせることができました。
出版当時の印刷の色味を再現できて、なおかつ、合紙製本に適した紙はどれか……。印刷・製本会社さんの試行錯誤は、実に半年もの間、続いたそうです。そしてようやく、「ポニー・ブックス」シリーズの印刷・製本にピッタリの紙が見つかり、復刊プロジェクトが前進します。
「合紙製本」での出版が可能になると、次に決めなければいけないのが、復刊する絵本のラインナップでした。
「ポニー・ブックス」シリーズは12巻刊行されていましたが、その内の何冊かは、出版社の倉庫にも保管されていないものだったそうです。佐々木さんは、古書店などから資料を取り寄せ、出版する作品を決定していきました。
佐々木:「ポニー・ブックス」シリーズは、当時、人気のマンガ家に、1冊まるまる絵本を描いてくださいと依頼をした、今考えても非常に画期的なシリーズでした。そのとき依頼をしたマンガ家さんは、皆さん20代から30代の実力者ばかりだったそうです。その中には、やなせたかしさんや、和田誠さんなど、「ポニー・ブックス」シリーズで初めて絵本を出版されたという方も多くいらっしゃいました。
『ぬすまれた月』を復刊した和田誠さんは、当時のことを振り返り「岩崎書店の会議室に、『ポニー・ブックス』シリーズを担当するマンガ家が一堂に集められたんだ。その中には、手塚治虫さんもいて、ぼくはそこで初めて、手塚さんに会ったんだよ」と話していたそうです。
佐々木:シリーズすべてを復刊したい気持ちはありましたが、中には、原画がほとんど残っていなかったり、保管状態が悪く、すぐに復刊できない作品も多くありました。そのため、原画が残っていて、今の読者の方にも楽しんでいただけると思う絵本から、復刊することにしました。
月がだいすきな男が、月をとってこようと決心し、長い長いはしごを作った。
「ばいかる丸」は大正10年に客船として生まれました。
佐々木:幸運なことに、『ぬすまれた月』も『ばいかる丸』も、ほぼすべての原画がとてもきれいな状態で保管されていました。そのため、原画から、新たにスキャニングをし直して、印刷することができました。それでも、当時と同じ色を再現することはとても大変です。印刷の担当者と一緒に、原画と印刷物、さらに当時の絵本を見比べながら、色の再現度を上げていく作業を何度も行いました。
製本方法、印刷、もうひとつ、「ポニー・ブックス」シリーズの復刊にあたり、こだわったのが「文章」と「書体」だと言います。
佐々木:50年以上前の作品ですから、文章には、今の子どもの本ではあまり使われていない表現もいくつかありました。それを修正することも考えたのですが、出版当時の雰囲気を残したいと思い、あえて、大きな修正をすることはありませんでした。また、書体も今主流のフォントを使うのではなく、当時使われていた「写植」をそのまま使用しています。
そのことを、特に感じることができるのが、『ぬすまれた月』だと佐々木さんは言います。
実は、『ぬすまれた月』は、2006年に一度、復刊されているのです。
2006年の復刊のときは、和田誠さんがちょうどプラネタリウムで上映するために、オール4色ですべての原画を一から描き直したものがあったので、ノンフィクションの部分を時代に合わせて文章も一部改訂して、出版することができたといいます。
2冊を比べてみると、文章の変化や、絵のこだわりを改めて感じることができるのではないでしょうか。
●シリーズ第3弾は、長新太さん幻のナンセンス作品『ベタベタブンブンおおさわぎ』
2018年1月に刊行された新刊『ベタベタブンブンおおさわぎ』も、長年復刊が望まれていた、長新太さんの初期の名作。
佐々木さんも、復刊プロジェクトがスタートする以前から、この作品を復刊しないのかなと思っていた一人でした。 パクパクと虫をたべてしまう怪物を退治しようと、虫たちは、あの手この手で力をあわせてたちむかいます。
佐々木:長新太さんの回顧展が行われたとき、偶然『ベタベタブンブンおおさわぎ』の原画を拝見する機会がありました。
そのときからずっと、「いつか『ベタベタブンブンおおさわぎ』を復刊すればいいのに」と思っていました。しかし、さまざまな事情から、なかなか復刊にこぎつけられずにいました。 それが、あるとき、刈谷市美術館に原画が保管されていることが分かり、今回の「復刊プロジェクト」のために特別にお借りし、復刊させることができました。
『ベタベタブンブンおおさわぎ』の復刊は、既刊の2冊の復刊よりもさらに難しかったと佐々木さんは振り返ります。
佐々木:まず、絵本はカラーなのですが、原画が墨一色で描かれていたのが難点でした。
長さんが書いた色の指定と、本を照らし合わせながら、「ここは赤い色、ここは緑色」と墨の原画に指示を出していく必要がありました。さらに、色が混ざり合って、にじんでいる部分などは、赤を濃く出すのか、緑を濃くするのか、印刷所の担当者さんと一緒に、頭を悩ませる部分も多かったです。
佐々木:出版当時、長さんは36歳。マンガ家としてすでに活躍されていましたが、絵本作家としてはまだ新人でした。しかし、『ベタベタブンブンおおさわぎ』には、その後、ナンセンス作品を多く世に送り出す、長さんの才能が存分に味わえる作品になっています。
この作品を読むと、長さんは40年近い作家生活を、ずっと新鮮な感覚のまま絵本を作り続けていたんじゃないかとすら感じられます。今のお子さんが、長さんのナンセンスをどのように感じるのか、すごく楽しみです。
『ベタベタブンブンおおさわぎ』だけではありません。自身の船に対する愛を細部にまで描き切った柳原良平さんの『ばいかる丸』や、絵本を描きたいという長年の夢が叶った和田誠さんのデビュー作『ぬすまれた月』など、「ポニー・ブックス」シリーズに名を連ねている作家の皆さんは、その後、絵本作家として生涯に渡り活躍を続けている方ばかりのように思います。
現在3冊刊行されている、「ポニー・ブックス」シリーズですが、今後、園山俊二さんの『火星へシルクハットを』、やなせたかしさんの『飛ぶワニ』を刊行する予定です。
佐々木:子どもたちは、作家さんの知名度ではなく、おはなしの面白さで、作品を楽しむと思います。
「ポニー・ブックス」シリーズは50年以上前に描かれた作品ですが、普遍性のある作品には、古さを感じさせない力があると思います。 今、このシリーズに出会う子どもたちには、純粋に作品の面白さを感じて楽しんでほしいと思います。
シリーズの続編が、今から待ち望まれる「ポニー・ブックス」シリーズ。今後も目が離せませんね。
「ポニー・ブックス」シリーズ※期間内【2018年2月1日から2018年2月28日まで】にご回答いただいた絵本ナビメンバーの方全員に、 絵本ナビのショッピングでご利用いただける、絵本ナビポイント50ポイントをプレゼントいたします。 感想を送る>>
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