石井桃子さん訳、くまのプーのはじまりのお話です。
「そうら、クマくんが、二階からおりてきますよ。バタン・バタン、バタン・バタン、頭をはしご段にぶつけながら、クリストファー・ロビンのあとについてね。」
こんなふうにはじまります。
クリストファー・ロビンのお父さんは、クリストファー・ロビンに「ひとつしてやってくれない?」とたのまれて、プーにお話をすることになります。
どんなお話かというと、「じぶんが出てくるおはなし。プーって、そんなクマなんだよ」。
つまりこれは、プーのためにお父さんが話した、プーが出てくるおはなしなのです……。
はちみつをたべたいクマのプー。
大きなカシの木の下で、蜂がブンブンいう音をきき、蜂っていうのはどうしてブンブンいうんだろね?と考えます。
そしてはちみつをとるために木にのぼりはじめますが……おっこちて失敗!
クリストファー・ロビンの助けを借りようと考えます。
(ここで、クリストファー・ロビンが「それ、ぼく?」とおそるおそるお父さんに聞いて、顔を真っ赤にするのがとても愛らしい場面です。)
プーが頭をひねって、風船をつかって、はちみつをとろうとします。
そのために自分を黒くぬって「黒雲」のふりをする……!?
クリストファー・ロビンでなくたって、「ばっかなクマのやつ!」と笑いたくなっちゃうかもしれません。
プーのへんてこな奮闘ぶり、詳細はぜひお話を読んでみてくださいね。
E.H.シェパードのカラー挿絵がふんだんに入り、絵童話のように読むことができます。
本書「はじめてのプーさん」シリーズは、石井桃子さんの名訳そのままに、一話ごとに楽しめるのがポイント。
言葉の言い回しはやわらかく、古めかしいと感じるところもあるかもしれませんが、全体的にのんびりとあたたかく響きます。
キャラクターの「プーさん」しか知らない方には、一度ぜひ手にとってほしいお話の世界です。
プーをはじめ、百町森のなかまたちがいきいきと暮らしているようすが、手にとるように伝わってきますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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