ショッキングピンクという色を知っていますか?
明るくて鮮やかで大胆で、見ているだけでワクワクする色。
本書はそんなピンクを発明し、ユニークかつ型破りな発想で、1920年代〜30年代のファッション業界をけん引したデザイナー、エルザ・スキャパレリの波乱万丈の半生を描いた実話です。
ローマの裕福な家庭に生まれたエルザですが、男の子を望んでいた両親はがっかりしたそうです。
10歳上のおしとやかなお姉さんは、「かわいい子」で、お母さんのお気に入り。
一方、想像力豊かで夢見がち、(大人から見たら)風変わりなことをするエルザは、「みにくい子」というあつかい。
美しいって、なんだろう?
幼いころから、エルザはずっと考えつづけていました。
お花畑みたいに、顔じゅうを花でいっぱいにしたらすてきじゃないかしらと思いつき、花の種を耳や口や鼻の中にまいて、お医者さんを呼ぶはめになったり。
レオナルド・ダ・ヴィンチが考えた空を飛ぶ機械のように飛べるはず!と信じて、開いた傘を手に、3階の窓から飛び降りてみたり。
コスチュームを変えて、いろんなものになりきってみるのも好きです。
あるときは探検家、サーカスの団員、まっくろな夜空……。
エルザの自由奔放な想像力は、周囲を困惑させる一方で、少女が世界の見方を変える武器でした。
22歳になったエルザは、旅の途中でお父さんのお友達にばったり出会い、パリの舞踏会に招かれます。
お金もなくドレスを縫う時間もなく、さあ、どうしましょう。
彼女は布を買ってピンでとめ、即興でドレスを作ります。
踊っているうちにピンはとれ、一枚の布に戻ってしまったけれど、このときエルザの中に、服を作りたいという情熱が生まれます。
結婚し、離婚を経験。子どもを抱えながら、デザイン画を見せて回る日々――。
未来が見えない不安を抱え、みじめな思いをしながらも、やがて彼女は、一枚のセーターのデザインをきっかけに、お店を持つことができます。そして、これまでの洋服の「常識」を打ち破り、ユニークで奇抜、着ているだけで女性が楽しくなる服やドレスを次々に生み出していくのです。
エルザは洋服のデザインを通じて、新しい美しさと生き方を提案します。
「こうあるべき」なんて考え方にとらわれず、もっと自由に、もっとしなやかに。ありのままの自分を見せても大丈夫! と。なんて力強く、勇気をくれるメッセージなのでしょう。
幼い時に本書に出会えたら、世界の見方が変わるかもしれないですし、「自分らしく生きるってなんだろう」と悩める大人の女性にもオススメの1冊です。
ページを開いて、おしゃれな絵と鮮やかな色に満ちた、創造と冒険の世界に飛び込みましょう!
(絵本ナビ編集部)
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