
定点観測の手法で、戦後の1946年から現在まで、ある町の変貌と、男の子と女の子の成長を描いた大型絵本です。日本が歩んできた道と未来へ向かう希望が描かれています。

絵を繰り返し眺めていて、見るたびにうなってしまいました。
近所育ちの幼なじみの、おじいちゃんとおばあちゃん。
2人がまだ、生まれたばかりの1946年から1996年までのふるさとが、細かく風景描写されています。
その細かさには、様々な発見があります。
立て直された家、残る神社。
いつの間にか畑はなくなり、川も埋め立てられました。
残っている店と、なくなってしまった店。
山のふもとのトンネルも、埋め立てられて風景はどんどん変わっていきます。
これが社会の変化なのですね。
鳥瞰図のように見渡していると、小さいころに広く見えた町が、どんどん小さくなっていく様も理解できます。
こんな中で、おじいちゃんとおばあちゃんは育ってきたのですね。
自然が人間によって変えられていく様は、水遊びしていた川が埋め立てられることに象徴されているようです。
ただ、高度成長の影が薄れると、都市化と自然回帰志向が共存するようになります。
環境を考えるようになったからでしょうか。
最後に未来予想図があります。
これには問題を感じます。
あの「ふるさと」が、「ふるさとテーマパーク」に変わってしまいました。
憩いの場所ではあるかもしれないけれど、生活感のない広場が「ふるさと」には思えません。
子どもたちは楽しそうだけれど、おじいちゃんおばあちゃんには悲しい風景ではないかと思いました。
子どもはどのように感じるのだろうか。
絵本の中のおじいちゃんと、それほど違わないだけ、社会の変化を見てきた私にとって、この絵本は大人版「ミッケ」でした。
隅々まで楽しめます。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子15歳)
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