この物語には、二人の兄弟が登場します。
仲のよい兄弟が、お互いを思いあいながらも、運命に翻弄され、
兄は苦悩の末、弟を殺してしまうことになり、その後、
弟の仕掛けたまじないにより、兄も弟の魂に召され、死んで行きます。
お話は長いですし、聞きなれないカタカナの名前がいくつか登場するので、4歳の子は途中で聞かなくなりましたが、6歳の子は熱心に聞いていました。
容姿が醜いというだけで親に捨てられた弟、
そんな弟と兄の心の通い合い、
兄を想い、兄の窮地を救う弟のやさしさ、
自分の保身のために兄が弟を殺してしまう悲しさ、弱さ。
最後は弟が、兄の魂を天に連れて行きますが、
弟は兄に対する憎しみゆえにそうしたのではなく、
悲しさ、愛しさが入り混じってそうしたのではないかと思います。
神という、たちうちできない存在に翻弄される二人。
人間とはなんと悲しく、かわいそうな生き物なのか・・・
そういう考えが物語の根底にあります。
文章ひとつひとつがすばらしく、言葉を選びに選んで、丁寧に、
長い時間をかけて作られたものだということがよくわかります。
また、絵もすばらしく、この絵本を書くためにどれだけ勉強されたことかと感心します。
読んだ後、しばらくじっと絵本を見つめてしまいました。
最後のあとがきも興味深く、まさに渾身の一冊といえるでしょう。
小学校低学年から、また大人の方にもぜひよんでもらいたいです。