数年前に担任していた中学1年生のクラスに読み聞かせた時の事です。以前から私の大好きな本だったので、「何か」を感じて欲しくて、ちょっと難しいけど、あえてみんなで英語版に挑戦することになりました。
この本のキーとも言える「木はうれしかった。だけどそれはほんとかな。」の所が、原文では「木はうれしかった。でもそれはほんとうに、というわけではなかった。」と、ややストレートな表現になっているのです。
読んだ後で、「木がこの場面で初めて、心からうれしいと思えなかったのは、どうしてだと思う?」と問いかけてみました。
予想された答えは「これまで坊やにいろいろしてあげたのに、幹まで切られて、ついに木も悲しくなった。」という見方。こう考えた生徒はクラスの半分くらい。ところが、その後、続々といろんな意見が出てきたのです!
「木が悲しかったのは、幹がなくなったからじゃなくて、坊やが『舟が欲しい』と言ったから。舟ができれば、もう会えなくなると思ったから。」つまり、木は、自分を犠牲にしているという思いは全くなくて、ただ純粋に坊やと一緒にいたいだけなのだという見方です。
「先生、絵をよく見て!坊やは幹を切るときに、いちばん下のハートの落書きは残しているでしょう。ちいさい時に木と遊んだ事は忘れていなかったんだよ。だから坊やはそんなに悪い人じゃないと思う。」
確かに!これには目からウロコでした。(いちばん下の落書きのハートの中には、「ぼくと木」と書かれているのです)
中1とはいえ、子どもってすごいですね!大人が何気なく見過ごしているところを、しっかりみているんですよね。
生徒達のいろんな感想を聞いて、ますますこの本が好きになりました。いつか大人になった彼らが、この本を手にしたとき、今度はどんな感想を持つことになるのか?とっても楽しみです。