藍やグレーの濃淡が美しい水彩画の表紙には切り立った岩場と一匹のキツネ、空に浮かぶ輝く月が描かれています。キツネのいる辺りはぽぉっと明るく輝いているようです。
高い高い山の奥の暗い谷間にある湖。そこにはこんな言い伝えがありました。
お月さまが時々空から下りてきて冷たい湖で水浴びをする。
水浴びした月がぷるぷるっと体を震わせると、飛び散ったしずくが美しい宝石になるという。
しかし誰もこの湖がどこにあるのか知りません。ただひとりその場所を知っていた羊飼いが死んでしまい、孫のボルカが偶然この湖に行きついて宝石を手にします。
昔話によくあるような、純真な少年と欲深い権力者が出てくるストーリーですが、定番がゆえの力強さのようなものがあるのですね。
夜眠る前に娘に読んでやりましたが、読み終えた後すぐに「もう一回読む!」というのです。最近なかったことなので驚きました。これがこの物語の力なんだな、と感じました。
どのページもとても美しい水彩画で、少しレトロな感じもあります。日本人好みな感じの絵だと思います。
図書館で見つけたのですが、絶版のようですね。もったいないです。
別の方の訳で、タイトルも違っていますが、この作品と思われる物語が後に講談社から出版されているようです。表紙をみたところ、描き直しされているようですが。
いつか見比べてみたいと思います。