見方によってはいろいろな捉え方ができる絵本かも知れません。
碁の好きな常念御坊は、隣村で檀家相手にうった碁の負け方が気になってしょうがありません。
帰り道碁のことばかり考えながら歩いて行くと、きつねに似たのら犬がついて来る。
やせてあまり食べていないような薄汚れた犬が気になってしょうがない。
どうして薄気味悪いと思ったのでしょう。
帰り道は遠く、夜も更けてきました。
茶屋でだんごを買って、借りた提灯。
寂しい道で、後ろからついて来るのがのら犬ではなく、きつねに思えてくる。
しかも、女に化けたりして。
寺にたどりついた常念御坊は、ついてきたのら犬を小僧に追い払わせるのですが、食事をして人心地つくと、のら犬にした仕打ちが申し訳なく思えてくるのです。
のら犬はいったい何だったのだろう。
常念御坊はどうしてのら犬をおそれ邪けんにあしらったのだろう。
考え方はいろいろでしょうが、とても意味深い本です。
鶴田さんの木版画が、どうしてものら犬を悪者にしてしまうように描いているのですが、のら犬はお礼を言われる故はあっても、何も悪いことをしていないのですよ。
読み返すごとに味わいのある絵本です。