那須に伝わる、九尾の狐のおはなしです。
美女に化けた狐は、古代中国の国家(殷と周)を滅ぼし、
インド(天竺)の皇太子を惑わしたのち、遣唐船に忍び込み日本に上陸、
玉藻前(たまものまえ)という名の女性に化け、鳥羽上皇の寵愛を受けながら、
悪事を働くチャンスを虎視眈々と狙っていました。
ところが陰陽師・安倍泰成に正体を見破られ、都から遠く離れた那須野が原に
逃げてきます。
そして、朝廷から遣わされた東国の武将、三浦義明・上総介広常率いる軍勢に
責められ、ついに悲壮な最期を遂げます。
時空を超え、世を惑わせ続けた九尾の狐。
実にスケールの大きなおはなしで、読みごたえがあります。
そして、赤羽末吉さんの挿絵はやっぱりすごいです。迫力があります。
時代物はやっぱり赤羽さんだなーと改めて思いました。
那須には現在も、狐の怨念が残っているとされる殺生石(国の史跡)があります。
毒(硫化水素ガス)を発生させており、近づくことはできません。
こんなところから、ひょっとすると本当の話なのでは?とも思わせてくれます。
子どもには少し難しいかなとも思いますが、低学年には補足説明を加えながら
読めば問題なさそうです。小1のわが子も真剣に聞き入っていました。
読み終わったあとで「本当にあったおはなし??」と真顔で何度も質問してきました。
また、大人の方々の前で読ませていただいた時には、思いのほか皆さん聞き入って
下さり、「絵本を読んでもらったのは数十年ぶり。感激しました」と言っていただきました。
絵本の底力を実感した瞬間でした。