「これだぁ〜!」って、言う感じです。
『くるみわり人形』は、チャイコフスキーが、バレエの台本にマリウス・プティパ(デュマの仏訳を使用)に依頼し、それが一人歩きし、バレエのステージ毎に脚色が変わり、クローズアップされるストーリーの山もそれぞれ微妙に異なります。
この絵本は、原作ホフマンの『くるみ割り人形とネズミの王様』に、近づけられた作品だという印象です。
ドイツの古い町。
クリスマスの日。
主人公シュタルバーム家のマリーの父親の友人ドロッセルマイヤーおじさんが、今年も素敵なプレゼントを。
兵隊の姿の胡桃割り人形。
マリーの喜びもつかの間、兄のフリッツが乱暴に扱い、人形はこわれてしまい…。
壊れた胡桃割り人形と眠ったマリーが夜中に目を覚ますと…。
ここから、夢かうつつか境界の霞んだ世界です。
読みながら、どんどん胡桃割り人形の身の上話に引き込まれていきます。
後半の(バレエの舞台ではクライマックスとも言える)お菓子の国への招待のシーンは、やはり子ども心を惹き付けます。
ラストをあっけないと見るか、クリスマスの夜にみた素敵なファンタジーの世界の余韻を楽しむページと見るかは、読者によって取り方が異なるかと思います。
中井貴恵さんの訳が柔らかく、ゆっくりと落ち着いて穏やかに読み進められます。
いせ先生の大ファンの私にとっては、夢の実現という作品です。
女の子には おねえさん になっても お母さん になっても、 おばあさん になっても、この時期に読み楽しめる名作だと思います。
今年のクリスマスのプレゼントに友人のお嬢さんに贈ります。