クリスマスイブの夜中、サンタクロースの存在を信じる少年が北極行きの急行列車に乗り、自分の夢を体験する美しいお話です。厚みのあるパステル画が想像をかき立て、深いメッセージが心に伝わります。もちろん村上訳が優れていることは言うまでもありません。鈴の音が余韻を残しますね。どんな音なんだろう……。
86年コルデコット賞受賞の彼の代表作というだけあり、本当にうなってしまったというか、見とれてしまったというか……。「絵本の世界に出現した、センダック以来のもっとも才能豊かな米国のアーティスト」という表現に偽りはありません。『ジュマンジ』以来、オールズバーグに魅せられて何冊か読みましたが、中でもこの作品は評判通りでした。蛇足ですが、82年は『ジュマンジ』がコルデコット賞受賞作品。センダックの『まどのそとのそのまたむこう』がこの年同賞オナーに選ばれているので(変な言い方ですが)オールズバーグ対センダック、82年はオールズバーグに軍配(?)が上がりました。どちらも甲乙つけがたいのが事実ですが。
わたしの方が酔って読んでしまったけれど、息子も楽しんでいたと思います。少年のポケットに穴が開いていて鈴をなくしてしまったところが一番印象に残ったそうで、学校のブックレポートにその場面を描いていました。(わたしはサンタと会った場面とか、北極号に乗った場面とか、そんなところが印象に残るのかなと思っていたのに、なんか、意外なところが気になっていたんだな〜と視点の違いを感じました。)
モダンな感じのクリスマス絵本です。主人公の少年が大人になってから回想して語るお話なので、男性が共感できるお話かなとも思いました。対象は小学校低学年以上。