センダックは、子供の本質を描くのが本当に上手い作家だと思います。パパはお留守、ママは相手をしてくれず、面倒な妹の世話をしなくちゃならないアイダの心の中は、決してふわふわしたおとぎ話で埋め尽くされてはいないでしょう。ぶっきらぼうにすら思えるアイダの台詞は、説明出来ない心の苦さを表現したものでしょうか。甘くて可愛い『こども』は所詮、大人のつくった「こどもらしさ」にしか過ぎないのだということを、センダックの絵本を読む度に思い知らされます。
それでも、妹を取り返しにゆくアイダはママのレインコートを着ていき、困った時にパパの声を聞きます。どんな親でもやはり、親は子供の拠り所であり、またそうあらねばならないことを示唆されているような気がするのです。
まだまだ、この作品の深みに到達出来るほどには読み込んでいませんが、子供の本質、親の本質、親子関係の本質を突きつけられるような、ある種の鋭さをもった作品です。こんなに深みのある絵本は滅多にありません。
その深さ故でしょうか。息子は決して「この本すき」とは言いません。でも時折読んで欲しくなるようです。そして、自分で持って来た時には、本気で集中して聞いています。子供には本物を感じる能力がある、と信じさせてくれる本でもあると思います。