創作だとは思えない作品。
那須さん自身の原爆体験が込められていると知って納得。
被爆して一人ぼっちになってしまった少女が自ら作る人形に姉への思いを込めて作り上げていく物語です。
被爆したことを隠して、生きてきた久江さん。
夫を亡くし、子どもたちも自立したことをきっかけに自分が生まれ育った家に戻り、任号を作り始めます。
人形に対する思いがとても強いのです。
そして、ある人形作家の展覧会で目にした人形に姉の面影を見出し、人形作家に人形作りの教わりながら姉の人形を作り始めます。
哀しいお話です。
原爆投下の日に出かけて帰ってこない姉。
姉を探し求めて命を失った母。
姉が母に縁日に買ってもらったヒマワリの髪かざり。
すべてがあの日に向かっていきます。
人形を作っていく細かい作業のように、細かく組み立てられていく久江さんの原風景。
モデルがいるのかと思ってしまいました。
片岡まみこさんの版画の挿絵もこの物語にはぴったり。
「放射能」に対する恐怖は、あまりに身近に感じる現在だからこそ、生々しく伝わってきました。