【あらすじ】
つるばら村でパン屋さんを始めたくるみさん。初めは宅配のみだった商売も、駅前に店を構え、とうとう10周年を迎える事になりました。今日もお店には不思議なお客さんがやってきます。くるみさんはお店の屋根を赤いレンガにしたいという夢があるのですが…
つるばら村シリーズ10作目、完結編です。
【感想】
このシリーズは、どこから読んでも面白いのですが、この最後の一冊は、やっぱり最後にとっておいたほうがいいと思います。
シリーズ中に出てきたいろいろな登場人物がゆるやかに関係をつないでいき、最後に、幸せになっていきます。くるみさんも、いろいろな経験をして、素敵に成長していった様子です。
作者の後書きにも描かれていますが、登場人物の言葉を借りて、作者がいろいろなメッセージを発信しているのが読み取れます。作者の周りにいるあらゆる存在が(それこそ、物語のように、自然や動物たちや、不思議な現象も含め)物語の世界を応援してくれていた感じが、素晴らしいです。
ステキなご縁に恵まれた、幸せな作家だと思いました。
「忘れ山のやまんば」というお話には、作者の故郷のおやつ「がんづき」が出てきます。岩手あたりではよく知られた素朴なお菓子なのだそうですが、物語の雰囲気と実にぴったりとあって、話が生き生きとしていました。このお話は、中でも一番、個人的に好きな話でした。
お話は終わってしまいますが、その後、くるみさんがどうなっていくのか。つるばら村の他の住人たちのその後も是非とも書いて欲しいと思っております。