第二次世界大戦中、小学生だった少年が体験した戦争に行く身近な大人たちと、その家族の様子。少年が大人になってから作文に書いたものを絵本化。
2015年刊行。巻末の後書きによれば、小学校で、父母に戦時中の体験を作文に書いてもらうという宿題が出された時、父の大島渚(映画監督)が忙しい中、すぐに書いてくれた、という。
息子の武は、当時はその作文に込められた思いなどがあまり理解できずにいた、という。
しかし、このような形で世に出た。
父が体験した戦争の、辛い出来事と、戦争はしてはいけないという強い思いが、そうさせたのだと私は思う。
ここで描かれていることは、爆撃や実際の戦場の悲惨な様子ではないが、とても残酷で辛い体験だ。家族が兵隊にとられた人たちのその後の様子が、淡々と語られている。ダイナミックな絵でもって、台詞がない部分にも、多くの言葉や思いが表現されている。
間接的な表現だからこそ、余計に伝わってくるものがある。
やっぱり、どうやっても戦争はやらない方がいい。
改めて思う。
戦争を知らない世代に、伝わりやすい表現ではないだろうかと思う。
ショックな出来事があった後、心が傷付き、行動がすさんでいく様子や、心の変化が言動に表れる様子もよくわかる。画家の圧倒的な表現力に、しびれる。