少し不気味かもしないけど、奥深い絵本だと思いました。
物語の中にもう一つの話がある。読んでいると、自分も物語の中の行商人になって話をきいているような気になりました。
誰もが親切で明るい村。行く先々でその地の昔話を集めている若者は、村人に案内してもらいある古老の家で宿を借り、様々な話を聞くことになります…。
最後の話が、この絵本のテーマ。
それは、いつも村人から馬鹿にされていた馬鹿正直な若者が、火山の噴火から村を守るという話。話の中の村人は昼間あった村人とはまるで正反対。
いやな話だと思いました。
村人たちは、自分達が馬鹿にして嫌がらせをしていた若者に救われ、今は明るく生活を続けている。どちらが本当の村人なんだろう。「さる」と馬鹿にしていた若者の犠牲をどう考えているのだろう。
同じ人間達の表と裏がこの絵本に出ているように思います。暗い過去に支えられて明るい現在がある。
実はこれが現実なんだと思います。川端さんは行商人にそれを伝えさせたかったのでしょうか。
息子はどう思ったかはよく分かりません。奥さんは「嫌な話だね」と言いました。
自分もそう思ったのですが、高学年の児童に読んであげて、子どもが成長していく過程でこの絵本の「不気味な部分が、実は重要な事なんだ」と感じてくれれば良いのかなと思っています。
嫌な話ではありますが、とても良い本です。