反核運動の先端を行くアーサー・ビナードさんの、怒りと祈りの込められた、渾身のドキュメンタリー絵本です。
ビナードさんの講演を聞くたびに、反核運動に関する文献や映像に出会うたびに、何度となく読み直している絵本です。
ベン・シャーンさんの硬質な絵にも、この絵本の持つエネルギーが満ち溢れています。
怒りを込めたクロッキーのような線画と、心の内まで染み込んでくるような独特な彩飾画の仕立と、ビナードさんの語りとのコンビネーションは絶妙です。
第五福竜丸と乗員は、不運な犠牲者でありながら、どうして社会の奥に追いやられたのでしょうか。
大きな社会問題が、裏社会から表面化するまでの政府の腰の引け方とご都合主義には憤りを覚えます。
この絵本は、東京都立第五福竜丸展示館で入手しました。
そこで第五福竜丸の来歴と乗員のその後、さまざまな事を学びました。
この事件を訴え続けた方の著作も読みましたが、生存されている方はお一人だけとか。
核廃絶運動が毎年8月を期に取り上げられる中で、社会が不確かな危機に舵取りしているようでなりません。