誰もが心の中に抱える、言葉にならないもやもやとした不安。この絵本は、その正体不明の感情に「ビクビク」という愛らしい名前と姿を与えてくれます。それだけで、少しだけ自分の心と向き合える勇気が湧いてくるようでした。
私を守ってくれるはずの小さな友達が、環境の変化によって自分を閉じ込める巨大な存在に変わってしまう。この巧みな描写は、不安という感情が持つ二面性を見事に捉えており、胸に迫ります。
孤独のどん底で出会った男の子。彼にもまた、寄り添う「ビクビク」がいる。その発見の瞬間に、世界の見え方が変わります。「私だけじゃなかったんだ」という静かな安堵が、頑なだった心をゆっくりと溶かしていくのです。
これは、不安を消し去るための本ではありません。自分の弱さや臆病さと共に生き、他者の痛みに寄り添うことを教えてくれる本です。心に「ビクビク」を飼う全ての子どもと、かつて子どもだった大人へ贈られる、優しい処方箋のような一冊です。