久々に読み応えのある児童書に巡り合いました。
バレエ「白鳥の湖」を原典にマーク・ヘルプリンが新たに作り上げた作品です。
山奥に住む老人が一緒に暮らす少女に老人の過去を話して聞かせます。
何故、自分が今、ここにいるのか、少女の両親はどこにいるのか。
王子ゆえの環境と苦悩・オデット姫の両親の悲劇等、バレエの舞台からは受け取ることの出来ない、奥行きの深い物語です。
村上春樹さんの訳は語彙・修飾語が多く、読み始めはその表現を頭の中で再現するのに苦労しましたが、オールズバーグの繊細にしてダイナミックな挿絵の助けを借り、読み進むうちにぐいぐいのその世界へ引き込まれます。
大人でも充分堪能できる、芸術的児童文学です。