【あらすじ】
つるばら村の勇一さんは、祖父にあこがれて大工さんになりました。
祖父が建てた山小屋を訪れてから、不思議なお客さんからの仕事が舞い込むようになりました。四季折々の素敵な依頼をこなす、若い大工さんのお話11篇。
つるばら村シリーズ、8作目。
【感想】
作者の茂市さんの家は、旅館をしていたそうです。建物を補修するために、しょっちゅう大工さんが訪れていたようで、大工さんは身近な存在だったとか。
後書きから、このお話が生まれるヒントがわかります。いつも思うのですが、茂市さんは本当に人に恵まれていて、人のご縁で素敵なお話が生まれるキッカケをつかんでいるようです。今回も、ご自身が懇意にしていらした大工さんの思い出や、その大工さんの後を継いだ息子さんとのご縁などがあり、生き生きとしたお話が出来上がった様子がうかがえます。
ファンタジー作品なのに、どこかリアルな感じ、現実的な、地に足がついた感じがあり、いつでも安心して読める素敵なお話です。
さすがにシリーズ8作目となると、不思議なお客さんが訪ねてくるのに、登場人物が慣れてしまうのか(笑)、大工の勇一さんは、誰がどんな風に訪ねてきても怖がったり、過剰に反応したりしません。びっくりするけど、面白いと思って受けて立つ姿勢で対応しているのが、本当に頼もしい。どんな依頼も、積極的にこなす、素敵な大工さんです。よっ、職人気質。がんばれ、しっかりやれよ!と応援しながら、一気に読み切ってしまいました。
どの話も、四季折々の日本の自然と美しい心がえがかれ、気持が温かくなります。夜、眠る前にちょっと読書をして、素敵な気持ちになるのにピッタリの作品です。シリーズとしては8作目ですが、順番を気にせず、この本から読んでも楽しめますよ。