佐木隆三といえば、ルポルタージュや小説で社会の病巣をえぐり続けるという、どちらかというとハードタイプの作家だと思っていたので、絵本との結びつきがよく分からなかったのですが、この絵本を見て、これは佐木さんの記憶そのものだと理解しました。
楽しい絵本でも、解りやすい絵本でもないのですが、いかにも佐木さん的な絵本。
朝鮮で生まれた佐木さんが、父親が海軍に召集されたために父親の郷里の広島に戻り、体験した広島の原爆。
軍国少年として育った佐木さんの思想崩壊と現実が語られています。
こんなとき黒田征太郎さんの絵は、佐木さんの心象風景をえぐるような表現で、残酷さも感じました。
伝えようとしていることがはっきりしているだけに、話の固さは絵本をとても重いものにしています。