現役の教師、福田先生の書く小学生は、とてもリアル。ときに大人の事情に振り回されて傷ついたり、同級生に対して理由もなく残酷になったり。そしてなにより、幼いながらのひたむきさと、揺れ動く心。ストーリーの面白さも相まって、等身大の心理描写にどんどん惹き込まれていきます。
主人公のふたりが交代で語り手となっていくのですが、それがまた面白い。ひとつの出来事に対してのお互いの気持ちがわかって、切なくなったりドキドキしたり。准くんが小野さんのお母さんの大切な言葉で小野さんを励まそうとしたシーンでは、思わず涙ぐんでしまいました。
ふたりが大好きな月森和の正体を突き止めようと試行錯誤しながら謎解きをしていくのもミステリーっぽくてワクワクする。このふたりなら、正体を突き止めれそうだなぁと期待しながら読み進めていくわけです。
「きみたちは、もっと自分たちの未来を信じていいと思うよ。変わるとか変わらないとか、それがいいこととか悪いこととか、そんなことじゃなくてさ。これからやって来るきみたちの未来を信じなきゃ。自信を持っていいんだよ。そしてあとは難しいこと考えないで、のんびりゆっくり進んでいけばいいんじゃないかなあ。」
この台詞、福田先生から子どもたちへのメッセ―ジなんだろうなぁ。大人が読んでも清々しい読後感をあたえてくれる物語です。福田先生の他の作品も読んでみたいなと思いました。