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靴屋のシロクマ一家のかわいいお話『シロクマくつや』おおでゆかこさんインタビュー

絵本の中にはいろいろな「お仕事」が登場します。今回、ご紹介するのは「靴屋さん」。でも、普通の靴屋さんじゃありません。シロクマかぞくが開いている「シロクマくつや」なんです。作者のおおでゆかこさんは、『シロクマくつや』が創作絵本のデビュー作。動物たちの特徴を捉えたデフォルメと生き生きとした仕草、カワイイ小物やインテリアのデザインなど、細部にまでこだわりが感じられて、何度も読み返したくなる作品です。これからが期待される絵本作家さんのインタビューをお楽しみください。

シロクマくつや
シロクマくつやの試し読みができます!
作:おおで ゆかこ
出版社:偕成社

新しいお店を開くのに、いい場所はないかと探していた靴屋のシロクマ一家が、森の中でぴったりの空き家を見つけました。なんと、靴のかたちをしているのです!シロクマの靴屋はたちまち評判になり、連日の大にぎわいです。それにしても、この変わった家は一体だれが建てたのでしょう?ある日、思いがけないお客さんがきて、その謎はとけるのでしたが…。親しみやすいイラストで語る、起承転結がわかりやすい温かなストーリー。細部まで描き込まれ、断面図あり、コマ割りの見開きありと、各画面に子どもがワクワクする工夫がいっぱい盛り込まれています。

『シロクマくつや』のお父さんは本の虫だった?

───『シロクマくつや』を読ませていただいて、デビュー作と思えないくらい、絵本の中に世界観が確立されていることに驚きました。ストーリーの構想はいつから考えていたのですか?

そうおっしゃって頂いて嬉しいです! 2011年にイラストレーターの友人と二人展をしたときに、「お家」をテーマにした絵本を作ることになりました。それが『シロクマくつや』の前身となる「くしゃみをしたら」というお話なんです。これがそのときに形にした絵本です。

───すごい! この時点ですでに靴をベースにした家の構想が生まれているんですね。


このブーツは、私がずっと愛用していたブーツをモデルにしています。
「くしゃみをしたら」では、ちょっと変わった外観のお家が良いな…と思い、巨大なブーツの家にしました。

───『シロクマくつや』の中でも、この家の間取りが描かれている場面が特に大好きなんです。

ありがとうございます。私もこの場面はお気に入りで、「くしゃみをしたら」のときから今回の絵本まで、消さずに死守した場面でもあります(笑)。子どもの頃に大好きだった「シルバニアファミリー」のお家の様なイメージで描きました。

───たしかに! リビングや寝室、靴を作る作業場まで細かく描かれていて、シロクマ家族の暮らしが一目で感じられるページだな〜と、何度見ても、ワクワクします。『シロクマくつや』の前身となった「くしゃみをしたら」はどんな話なんですか?


ここに住んでいるシロクマかぞくは、お父さんが本の虫で、お家も本だらけ。いつも本を読んでいて子どもとも一緒に遊ばないお父さんにお母さんが怒って、お父さんを追い出してしまう…という話でした。最後は家族が仲直りしてハッピーエンドになるんです。二人展終了後、この絵本を絵本出版社さんにお送りして、本を出版できないか持ち込みをしました。そのときにお声をかけてくださったのが偕成社さんでした。

───すぐに絵本にしましょう!というお話になったんですか?

この作品をベースにして、絵本を作ってみませんか?と言っていただきました。個人的にも、もっと緩急をつけたスケールの大きいお話を作りたいと思っていたので、編集の方からそう言っていただいて改めてお話を考えることになりました。

───改めてお話を考えるのは大変ではありませんでしたか?


本の家だったころのラフ(下絵)を見せていただきました。

最初はシロクマのお父さんが本の虫という設定を活かそうと思ったので、靴の形をした家から、本の形をした家に変えたりして…なかなかお話をまとめることができませんでした。あるとき、編集者さんから「靴の家というのをもっと生かしたお話にしたらどうですか?」と言っていただいて、シロクマの靴屋にしよう!と決めてからは、どんどんアイディアが生まれました。

───その一言が物語の変わるターニングポイントになったんですね。それからのラフは完成した絵本とほぼ同じ設定で…あ、でも、靴の作業シーンが片ページだったり、色んな靴が出てくる場面に動物たちが出てきていなかったり、少し変化がありますね。


作業をしている場面とお店の場面は見開きにして、細かいところもいろいろ想像してもらえたら…と思って描きました。3きょうだいが靴をオススメする場面は、靴だけを描くよりも、どんなお客さんが買っていったかまで分かった方が、より面白いかな…ということになり、変更しました。私自身もショッピングするのが好きなので、お店のショーウィンドーを見るときのワクワクした感じを出せたらいいなって思ったんです。



───空を飛べないペンギンに「ジャンピングぐつ」をオススメしたり、小さいネズミに恐竜みたいな「ガオぐつ」をオススメしたり、3きょうだいはなかなか商売上手ですよね(笑)。

そうですね(笑)。3きょうだいはお父さんとおばあちゃんが作る靴が大好きで、知り尽くしているんです。「うちのお父さんとおばあちゃん、すごいでしょ!」と家族の自慢をするような感じでオススメしているんだと思います。

───そんな大繁盛のシロクマくつやに、靴の落とし主がやってくるのですが、それが巨人で…。今までも「人間と巨人」や、「人間と動物」のやり取りで物語が進行する絵本はあったと思うのですが、巨人と動物たちというのがすごく新しく感じました。

靴のお家は、巨人が落とした靴だった…という設定は、実は「くしゃみをしたら」のときから出ていたものだったんです。でも、色々お話を変えているうちに巨人の靴という設定を出さない時期があって、編集者さんに「巨人が出てこないのはもったいない!」と言っていただいて…。そこで巨人を登場させてみたら、見事に物語の起承転結の「転」が生まれて、私が当初描きたいと思っていたスケールの大きなお話になりました。

───巨人が入口から顔をのぞかせている場面はすごく迫力がありますよね。シロクマも動物の中では大きいのに、そのシロクマよりずっと大きいなんて、スケールの大きいお話ですよね。自分たちのお家が巨人の坊やの落とし物と分かって、お家を返すのかな…と思っていたら、新しい靴をプレゼントするというのも、すごく面白い展開だなと思いました。

この絵本で描きたかったのは「家族を大事にしてほしい」という思いでした。このシロクマかぞくはお父さんとおばあちゃんが靴職人で、お母さんがお店で靴を売っていて、子どもたちがお手伝いをしているんですが、仕事終わりには一緒にテーブルを囲んでご飯を食べるといった団らんがあります。そうすると、何かトラブルなり事件が起こったとき…今回は、靴の家を巨人に返さなければならないということなのですが、お父さんが先頭に立ち、みんなで力を合わせて一緒に解決していける。そういう、コミュニケーションを子どもたちに感じてほしかったんです。

───たしかに、お父さんの一言で、シロクマかぞくが巨人の坊やの靴を作る場面は、今まで以上に家族が結束している感じがしました。大きな道具を使ったり、クレーンを使って作業をしていたりしている様子がとても可愛く、一生懸命さがより伝わってきました。そして、靴の完成シーン。ここは、縦に開く見開きで描かれていて迫力がありますね。


この場面は、絶対に縦に大きく見せたかったので、出来上がった1足をドーンと大きく描きました。何か、子どもたちにも大きなことをやり遂げた結果のようなものを感じてもらえたら嬉しいです。

───花火が上がっていたり、ケータリングの食べ物が出ていたり、とても賑やかな場面ですよね。写真を撮っている動物がいたり、ダンスを踊っているペンギンがいたり、サーカスのテントがあったり…細かく見てみるとここにも色んな発見がありますね。


巨人の坊やの誕生日プレゼントでもあるので、華やかな場面にしたいと思って描きました。シロクマかぞくも、靴を借りていた恩返しをしたいと考えて、新しい靴を作ったので、そういう思いやりも絵本で感じてもらえたら嬉しいです。

───新しい靴を坊やが喜んでいるのも、とても微笑ましい場面ですよね。

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おおで ゆかこ

  • 1986年生まれ。2009年京都精華大学カートゥーンコース卒業後、イラストレーターとして書籍や雑誌、絵本の挿絵を描くほか、文房具や雑貨のイラストとデザイン、ぬいぐるみの販売など幅広い分野で活動中。著書に『すてきなおかし作り』他「はじめて絵本」シリーズ、『シロクマくつや』などがある。

作品紹介

シロクマくつや
シロクマくつやの試し読みができます!
作:おおで ゆかこ
出版社:偕成社
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