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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  ユニークな作品にファン多数! エドワード・ゴーリーの世界翻訳者 柴田元幸さんインタビュー

ナンセンスで不可思議で美しい。柴田元幸さんも魅了されたゴーリーの魔術とは

───つげ義春とか、いしいひさいちとか、ゴーリーとは一見関係のない名前が出てきましたけれど(笑)。
柴田さんはナンセンス漫画がお好きだったんですか。子どもの頃、韻文詩を読んだりとかは?

韻文詩どころか散文詩も、詩はぜんぜん読まなかった。本も読まなかったです。漫画ばっかり。
(取材中、駅前商店街2階の喫茶店からアーケードを見下ろして)あの携帯電話ショップは去年まで本屋だったんですけど、子どもの頃から本屋で買うのは『少年サンデー』とかばっかりでね。うちの実家はこのすぐ近くなんですよ。
好きだったのは手塚治虫や藤子不二雄より、だんぜん、赤塚不二夫です。赤塚不二夫は破壊力があるというか、突き抜けてるんですよね。子どもの頃から一貫してナンセンスは好きですね。


『優雅に叱責する自転車』より

(編集者):私自身もそうでしたが、わけの分からないものって、子ども心に好きですよね。ゴーリーの絵本を翻訳出版したかったのも、そもそも自分が思春期にゴーリーの絵本に出会えていたらよかったのにと思ったからでもあります。

───“大人向け”と言われがちなゴーリー絵本ですが、この何とも言えない魅力を、そう言い切ってしまうのももったいないですよね。
子どもと一緒に楽しむなら、どんな本がおすすめですか。


柴田さんおすすめはこちら。子どもと一緒に楽しんでみよう!

『ジャンブリーズ』は素晴らしくいいですよ。海へ冒険に出ていく、ちょっとわけが分からない感じのストーリーと不思議な絵は、小さなお子さんも好きじゃないかな。

ジャンブリーズ
ジャンブリーズの試し読みができます!
文:エドワード・リア
絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社

詩人リアの傑作5行詩(リメリック)に、奇才ゴーリーが絵を描いた! ジャンブリーズが住む海の向こうへ……。ふたりのエドワードによる、ナンセンスにあふれたごきげんな絵本!


『ジャンブリーズ』より

ふるいにのって ふなでした
 ふるいのふねで うみにでた
とめるともらを ふりきって
あらしのあれる ふゆのあさ
 ふるいのふねで うみにでた!

この5行は僕の技術で誇れる最高の訳です。声に出してお子さんと読んでもらえると嬉しいです。

───エドワード・リアの詩に、エドワード・ゴーリーが絵をつけた絵本ですね。

このエドワード&エドワードペアが素晴らしいんですよ。
エドワード・リアはゴーリーよりさらに100年くらい前、1812年に生まれたイギリスのナンセンス詩人です。画家としても非常に評価された人物で、リメリック詩(5行脚韻詩)に滑稽な挿絵をつけた作品を発表し、『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルなどにも影響を与えたと言われます。

───「ふるい」ですよね? 「たらい」ではなくて。
ふるいには穴があいていますよね?(笑)

Sieveですから、ふるいですよ。穴があいているけど、大丈夫なんです(笑)。
ふるいに海水がしみてきたら、壺に入って夜を過ごすんです。

───ゴーリー自身がテキストを書いた作品とは、またひとあじ違う、明るさや勢いが絵にある感じがします!

そうですよね。姉妹篇に『輝ける鼻のどんぐ』があります。『ジャンブリ―ズ』と微妙に重なりあう部分もあるけれどまた別の次元のお話。あわせて読んでもいいし、別々にも読めます。
あとは『題のない本』や『まったき動物園』もいいですよ。『題のない本』は、固定カメラでとらえた風景の中、不思議な生き物が増えて……いなくなるシュールな絵本。言葉は、意味不明の造語のみです。まさに異色の絵物語作家エドワード・ゴーリーらしい本ですよ。ぜひお子さんの感想を聞きたいです。「ナンセンス!」とか否定されるのが怖いけど(笑)。

題のない本
題のない本の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
日本語表記:柴田 元幸
出版社:河出書房新社

定点観測のようなカメラワークでとらえた画面の中に、次々と登場する不思議な生き物たち。激しくシュールなゴーリーの魅惑の世界が展開する大傑作。


『題のない本』より

『まったき動物園』はアルファベット順に幻獣が出てきます。文章を読まずに絵を見ているだけでもおもしろいかもしれません。

『華々しき鼻血』は、“副詞”がアルファベット順になっています。これも1ページの絵の中のユーモアを楽しんでほしいですね。訳者としては、この『華々しき鼻血』の訳もけっこう気に入っています。

華々しき鼻血
華々しき鼻血の試し読みができます!
著:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社

はてしなく編まれるマフラーや、だらしなく供されたプディングを絶妙の副詞で捉えたアルファベット・ブック。副詞にかつてない最大級の栄光を与えたゴーリーらしい言語感覚が光る大傑作。

───柴田さんが仰るには、副詞の選び方でゴーリー的世界がはっきり浮かび上がってくるとか。
あとがきで以下のように類型化していらっしゃいましたが……。
1 無為系 (あてどなく/Aimlessly、きもそぞろに/Distractedly、いたずらに/Fruitlessly)
2 悪意系 (まがまがしく/Balefully、ふきつに/Ominously、ねちねちと/Repressively)
3 切ない系 (やるせなく/Hopelessly、ものうげに/Jadedly、せつなげに/Yearningly)
4 曖昧系 (さっするに/Presumably、おぼろげに/Vaporously)


『華々しき鼻血』より

そうですね。確固たる目的を持たぬ人間が、悪意に満ちた世界の中で、切ない想いをしばしば胸に抱えて、不確定な生を生きている……というゴーリー的世界観。
でも、読後感は妙にさわやかで、ここにゴーリーの魔術があります。

───不思議ですよねえ。読んでいて、思わず笑ってしまいました。

絵本というのは総合芸術ですから。たとえば文章だけをとりあげて、子どもが死ぬから残酷な作家だ、というのはフェアじゃない。絵も文章も、その二つがあわさったゴーリーの絵本は、圧倒的な芸術です。
たとえば、クジラやイルカが死ぬのは残酷だという言説がありますよね。でもそれならゴキブリを殺すのだって残酷なわけで、子どもやイルカが死ぬのだけが残酷だというのは、僕自身は好きじゃない。
人間とほかの生き物の間に線引きしたくなる気持ちはわかるけれども、本来、地球上で人間がいちばん偉いわけじゃないですよね。芸術のいいところは、そういった人間中心の“良識”から自由でいられることだと思います。

ひらがなで訳した作品は、今までご紹介した『ジャンブリーズ』『華々しき鼻血』『題のない本』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』のほかに、『むしのほん』などもありますから、子どもたちも読んでみて感想を聞かせてほしいですね。
文字がまったくない絵本もいくつかありますよ。ちょっと不気味な『ウエスト・ウィング』、猫好きなゴーリーならではの『キャッテ ゴーリー』とか。


『キャッテ ゴーリー』より。ゴーリー作品の中では、なぜか猫には不幸は起こらない。晩年に移り住んだボストン郊外の家で、ゴーリーは亡くなるまで猫たち6匹と暮らしていました。絵の中に隠れている数字以外は、文字がない絵本。

───文章があるものはどれも、原文と訳文が併記されていますよね。読み比べるのもおもしろいし、英語の勉強になりそう!
小学校高学年や中学生のときにこんな絵本に出会いたかったです。

小さな子を意識して訳したわけではないので、むずかしいものもありますけど、子ども向けにボキャブラリーを制限したりはせず、とにかくゴーリーの原文を忠実に再現することをめざしました。
わかりやすくすることも大事かもしれないけど、原文が醸し出すものを曲げてまでわかりやすくするのは一種の誤訳です。そういう意味では、絵本の翻訳も、小説の翻訳も同じです。

でもね、僕がはじめてゴーリー作品を読んだとき、『蒼い時』とか、もうその絵の美しさに夢中で、文は読んでいなかったねえ。ときどき、絵から「これ、何を言いあっているんだろう」と思って文章を読みましたけど。
読んだって意味が分からない不思議なセリフですからね。訳者がこう言ってはなんだけど、絵だけでも楽しいのがゴーリー作品の魅力だと思います。

蒼い時
蒼い時の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社

「生きることじゃなくて、生きてもらうことが大事なんだ」旅嫌いのゴーリーが唯一遠出したときの思い出を、2匹の犬(もどき?)に託して語る摩訶不思議な物語。珍しく可愛いお話です。


『蒼い時』より

柴田元幸さんがエドワード・ゴーリーの作品に出会ったのは?

───ところで、柴田さんが翻訳を手がけるきっかけは、何だったのですか。

出版社から依頼があったのです。雑誌『文藝』時代からおつきあいがあった編集者から、企画をいくつか打診されました。当初はエッセイをという話もありましたが、そっちはまとまらず、ゴーリー作品の翻訳をしようという話になりました。

───編集者から依頼される前に、エドワード・ゴーリーについてはご存知でしたか?

知っていましたよ。編集者が僕のところに原書をもってきてくれたのは、1998〜99年頃かな。
それより前、80年代後半から90年代前半にかけて、丸善の洋書売場で「アンフィゴーリー
Amphigorey)」(1972年発行)を見つけ、すごいなあと思って購入しました。
1冊のペーパーバックの中にエドワード・ゴーリーの作品が15タイトル入って当時15ドルくらいで買える、お買い得版だったんですよ。アメリカではアンフィゴーリー・シリーズとして4冊出版されています。
『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『雑多なアルファベット』『蒼い時』などが印象に残っていますが、1ページに1枚の絵ではなく、1ページに何枚もの絵がずらずらっと続けて並ぶ廉価版です。ゴーリーの絵をたくさん手軽に味わうにはいい本ですね。

───最初に見たとき、翻訳してみたいと思われましたか。

いや、いや。その頃すでに翻訳の仕事をやっていましたけれど、こんな作品を翻訳できるわけがないと思っていました。まずほとんどが詩ですから。詩は小説より圧倒的に翻訳しづらい。
それに、僕は好きだけど、こんなものを好きな人が世の中にはそんなにいないだろうと思っていた(笑)。
一読者として楽しんで見ていましたけど、自分が翻訳してみようとはまったく考えませんでした。

───一読者として楽しんでいたのが、あとになって、実際に翻訳することになったときはいかがでしたか。

いざ「翻訳してください」と言われれば、「訳せない」と思っていたものも、何とかできないことはないんだなと思いましたね。むしろ取り組んでみると、押韻や型など一定の制約があることで、自分でも思ってもみなかった芸ができたりする。

───では「アンフィゴーリー」ではじめてゴーリーの絵を知った……と。

実はそれより以前、ニューヨークのゴサム・ブックマート(長年ゴーリーを支援していた本屋)には、コネチカット州に住んでいた1984年から好きでよく行っていたので、店に置いてあるゴーリーの絵のTシャツを買って着ていたんですね。
“エドワード・ゴーリー”なんて知らないで、「おもしろいTシャツだなあ」と(笑)。

(編集者):翻訳をお願いした『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『うろんな客』『優雅に叱責する自転車』の3冊が英米で復刊されると決まったときでした。
日本で出版したいと資料をもってうかがったら、柴田さんが「この人のTシャツ、もってるよ!」と仰って(笑)。

───どんな柄のTシャツですか?


ゴーリーTシャツの数々!写真は『エドワード・ゴーリーの世界』(河出書房新社)より

子どもがいーっぱい本を抱えて、SO MANY BOOKS;SO LITTLE TIME.(本はたくさんあるけど人生は短い)という言葉が入ったTシャツとか……猫の絵のシャツもあったな。知らずに着ていましたよ。

出版社おすすめ



【連載】児童文学作家 廣嶋玲子のふしぎな世界
可愛い限定商品、ゾクゾク♪

柴田 元幸(しばたもとゆき)

  • 1954年、東京生まれ。アメリカ文学研究者。2005年『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞受賞。ほかの著書に『生半可な學者』(白水Uブックス、講談社エッセイ賞受賞)などがある。2010年、ピンチョン『メイスン&ディクスン(上・下)』(新潮社)で日本翻訳文化賞受賞。

エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)

  • 1925年、シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。またエドワード・リアやサミュエル・ベケットらの作品の挿画、劇場の舞台美術なども手がけた。幻想的な作風と、アナグラムを用いた(Ogdred Weary など)ペン・ネームを使い分けて、たくさんの私家版を出版したために、多くの熱狂的コレクターを生みだした。厖大な作品とミステリアスな人物像については『エドワード・ゴーリーの世界』(濱中利信編、小社刊)『どんどん変に… エドワード・ゴーリー インタビュー集成』(小山太一・宮本朋子訳、小社刊)で知ることができる。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。

作品紹介

ギャシュリークラムのちびっ子たち
ギャシュリークラムのちびっ子たちの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
絵:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
うろんな客
うろんな客の試し読みができます!
作・絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
優雅に叱責する自転車
優雅に叱責する自転車の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
不幸な子供
不幸な子供の試し読みができます!
作・絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
蒼い時
蒼い時の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
華々しき鼻血
華々しき鼻血の試し読みができます!
著:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
敬虔な幼子
敬虔な幼子の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
ウエスト・ウイング
ウエスト・ウイングの試し読みができます!
著:エドワード・ゴーリー
出版社:河出書房新社
雑多なアルファベット
雑多なアルファベットの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
キャッテゴーリー
キャッテゴーリーの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
出版社:河出書房新社
まったき動物園
まったき動物園の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
題のない本
題のない本の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
日本語表記:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
おぞましい二人
おぞましい二人の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
ジャンブリーズ
ジャンブリーズの試し読みができます!
文:エドワード・リア
絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
輝ける鼻のどんぐ
輝ける鼻のどんぐの試し読みができます!
作:エドワード・リア
絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
悪いことをして罰があたった子どもたちの話
悪いことをして罰があたった子どもたちの話の試し読みができます!
絵:エドワード・ゴーリー
文:ヒレア・ベロック
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
蟲の神
蟲の神の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
むしのほん
むしのほんの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
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