遊んだあとは「おかたづけ」。そう言うのは簡単だけど、きちんと「おかたづけ」できているでしょうか? 大人でもなかなか実践することが難しい「整理整頓」を、楽しい絵本で紹介した『ななちゃんの おかたづけ』(赤ちゃんとママ社)。絵本ナビでも何度かレビューコンテストを実施し、ご存知の方も多いと思います。
今回は、『ななちゃんの おかたづけ』がどのような人の手に渡っているか、売り場でお客様とお話する書店員さんに取材を行いました。本を売るプロから見た『ななちゃんの おかたづけ』の魅力に迫ります!
- ななちゃんのおかたづけ
- 作:つがね ちかこ
おかたづけアドバイス:鈴木 尚子 - 出版社:赤ちゃんとママ社
はじめてのしつけのひとつの「おかたづけ」。 おかたづけのしくみが3つのステップで紹介されているので、小さな子どもにもわかりやすく、絵本を通して楽しみながらおかたづけが身につきます。
●「“おかたづけ”が苦手な私も、チャレンジしてみたいと思いました。」ジュンク堂書店 松戸伊勢丹店 鈴木 統太郎さん
───『ななちゃんの おかたづけ』を最初に手にしたときの感想をお聞かせください。
発売当初は、それほど注目されていなかったと思います。ただ、面陳(※)にしていると、きちんと売れていく絵本だという印象でした。通常、絵本は発売後、しばらくたつと棚にさしてしまうのですが、そうするとお客様の手に取っていただく機会がグッと減って売り上げが明らかに落ちてしまったため、この絵本は、常に表紙が見えるように展示するようにしています。
※面陳……店頭で表紙が見えるように本を陳列する方法。
───表紙から絵本の楽しい雰囲気が感じられるのかもしれませんね。
そうですね。主人公の「ななちゃん」がとてもかわいらしく描いてありますし、周りに子どもが好きなおもちゃがたくさん、ちりばめられているのも、魅力的だと思います。それと、表紙の色。実はオレンジ系の色は退色が起こりやすいので、あまり積極的に使われない色なんです。あえて、その色を使っていることで、ほかの本の中でも目立たせて、目を引く効果があると思います。
───店頭で絵本を購入されるお客様の特徴は何かありますか?
当店にお越しになるお客様は、新聞をよくお読みになる方が多いようで、「新聞に載っていた絵本を探しているんですけど……」とお問い合わせいただくことがよくあります。
『ななちゃんの おかたづけ』はお父さんお母さんが、お子さんに購入されることも多いですが、おじいさん、おばあさんがお孫さんのためにお買い求めになることも多い絵本だと思います。
それと、絵本ナビのレビューをご覧になっていて、『ななちゃんの おかたづけ』を探されている方もいらっしゃいます。
───鈴木さんが、お客様にこの絵本をオススメすることはありますか?
「おかたづけ」をテーマにしている作品ですから、そういうお悩みを感じていらっしゃるお客様には、積極的に薦めたいと思っています。しかし、なかなかそういうお問い合わせをいただかないので、オススメする機会が少ないのが残念に思っています。ただ一度、お姫様が好きなお子さんに、お姫様が登場するページをお見せしてオススメしたことがあります。
───特にお気に入りの場面、面白かったところはありますか?
個性豊かなオモチャたちが、たくさん出てくる場面に、子どもたちはワクワクすると思います。中でも、個人的に気になっているのは「けしゴムくん」です。「ぼくたちを まとめて しまえる“おどうぐばこ”を つくっては どうでしょう?」と大人っぽい言い方でななちゃんを諭しているのが面白かったです。
───「けしゴムくん」の提案を受け入れて、ななちゃんがおかたづけを決意する場面ですね。
オモチャに諭される子どもという構図もとても印象に残りますよね。ただ、「おかたづけをしましょう」と読者に伝えるのではなく、周りの人の気持ち、物の気持ちを考えて行動するというストーリーは、子どもたちの心にしっかりと響くと思いました。
───鈴木さんご自身は、片づけは得意な方ですか?
仕事上での片づけは得意です。ただ、家の中は本が大量にあって、なかなか捨てられず……(苦笑)。なかなか思うように片づけられないので、片づけなければと思っています。
───『ななちゃんの おかたづけ』を読んで、ご自身も実践してみようと思いましたか?
小さい子にもわかりやすく片づけの方法が書かれているので、すぐにチャレンジできそうだと思いました。お子さんと一緒に大人の方も、実践していただけたら、お家の中がスッキリすると思います。
───書店員さんとして、お客様に向けておすすめポイントを教えていただけますか?
おはなしがきちんとありますので、まずは読み聞かせをする本として読んでほしいです。それでお子さんが何か気付いてくれるのであればよし、おはなしを読んでとせがんでくれるのであればそれもよし、という感じで読んでいただければ良いと思います。
おかたづけに無理につなげると、「この本は読まなくてもいい」と思っちゃうのは悲しいので、おはなしを楽しんでいただけるよう一緒に読み聞かせをしてもらえると、本も本望だと思います。
ジュンク堂 伊勢丹松戸店
住所:千葉県松戸市松戸1307-1 伊勢丹松戸店8階
電話番号:047-308-5111
営業時間:10:00〜21:00
https://honto.jp/store/detail_1570123_14HB320.html
(おまけ)
ジュンク堂書店 松戸伊勢丹店 児童書担当・鈴木さんオススメの作品
●『サムとデイブ、あなをほる』(文:マック・バーネット 絵:ジョン・クラッセン 訳:なかがわ ちひろ 出版社:あすなろ書房)
『どこいったん』(クレヨンハウス)で一躍注目を浴びた、ジョン・クラッセンさんが絵を描いている作品です。SFの要素とまちがい探しの要素が絶妙に融合していて、おはなしも楽しめるし、遊び心もある。穴を掘るという、子どもなら一度はハマるテーマを、今までにない描き方で表現した作品です。
●『「悩み部」の結成と、その結末。』(著:麻希 一樹 絵:usi 出版社:学研)
1編5分程度で読める、ショート・ショートのシリーズです。ショート・ショートですと、大人の本も子どもの本も、星新一さんがメジャーで、それ以外の作品がなかなか出版されていなかったのですが、このシリーズが出たことで、久しぶりにショート・ショートにスポットライトが当たりそうで、期待しています。