『クリスマス・キャロル』『ピノキオの冒険』『シンデレラ』『百年の家』『ラストリゾート』ほか、数々の名作を独自のスタイルで表現している国際アンデルセン賞受賞画家ロベルト・インノチェンティ氏。2013年のボローニャ・ブックフェアで、アメリカの出版社“The Creative Company”のブースにいらしていたインノチェンティさんに、新作『ガール・イン・レッド』 についてお話を伺いました。
- ガール・イン・レッド
- 原案・絵:ロベルト・インノチェンティ
文:アーロン・フリッシュ
訳:金原 瑞人 - 出版社:西村書店
お話は魔法だ。空みたいなもの。ころころ変わって、聞く人をおどろかせて、好きなようにしてしまう。病気のおばあさん、深い森、悪いオオカミ、フードつきの赤いコートをきた女の子。うっそうとした都会の森をぬけて、おばあさんの家へとむかうソフィアは、色と騒音あふれる、森の心臓<THE WOOD>へと誘われる。そこはなんでもある、魅惑的な世界。まるで、嵐の日の空もようみたいなソフィアのお話の結末は……。
●大都会という森に暮らす、現代版「赤ずきん」ちゃん
───主人公ソフィアはお母さんと妹と三人で、都会の一角にたつアパートに住んでいます。ある日、お母さんに頼まれて、離れて暮らす病気のおばあさんのところへ食料を持っていく……。 まさにこれって、赤ずきんの話の流れですが、森ではなく、舞台を大都会に選んだのはなぜですか?
私はこの物語の舞台を、ごく日常の典型的な場所に置きました。普段見ている現実、もしくは見たくない現実を、あえて描くことで表現しようと思いました。都会はファンタジーにでてくる世界や森と比べて、わかりやすいでしょう。でも、都会には、怖いことがたくさんあります。子どもたち、特に女の子にとっては、暗い森よりも都会の方がより危険なのです。
───インノチェンティさんが具体的にイメージした都市はありますか?
我が家の近く(インノチェンティさんはフィレンツェ近郊在住)や、フィレンツェ、ミラノ、ナポリ、デトロイト、メキシコ・シティなどの近郊がモデルです。いわゆる昔ながらの街並みの美しさとか、公園や庭付きの家が建ち並んだ住宅街があるようなところではなくて、世界中にある「普通の」景色を探しました。
───「いいかい、いつでも耳をすませてなくちゃいけないよ。だれもが見てくれているようだけれど、だれも見てくれていないからね」これは、誘惑あふれる街が身近にある子どもたちへのメッセージですね。
「親しげに装って近づいてくる人には気をつけなさい」
「道で会った人を信じてついていってはだめですよ」
「知らない人からお菓子を受け取ってはいけません……」
昔話によくみられる教訓は変わらないどころか、ますますタイムリーになっています。