シリーズ1作目、『くれよんのくろくん』(童心社)の発売から16年。2015年に発売されたワークブック絵本『くろくんとおえかきえんそく』に続き、おはなしとしては4作目となる『くろくんとちいさいしろくん』が発売となりました! 8年ぶり、ファン待望の新作ということで、さっそく話題になっている今作。発売を記念したイベントに、絵本ナビスタッフもおじゃましてきました! よみきかせに親子ワークショップ、サイン会と、盛りだくさん。イベント終了後には、なかやさんに、新作についてお話を伺うことができました。
- くろくんとちいさいしろくん
- 作・絵:なかや みわ
- 出版社:童心社
ちいさくてしろいくれよんが、まいごになりました。くろくんたちは、力を合わせてしろくんのなかまをさがしますが見つかりません。くろくんたちはしろくんをなかまにおむかえすることにしました。けれどある日…。
場所は童心社KAMISHIBAIホール。
くろくんと写真が撮れるフォトスポットがお出迎えしてくれました!
イベントに参加したのは、会場の近くにお住まいの方や抽選で招待された、シリーズのファン15組49名の親子の方たち。
こんなかわいい「くろくんポシェット」をつけてきたお友達もいましたよ! ママのお手製なんだそう。
まずは、童心社のスタッフさんによる『くろくんとちいさいしろくん』のよみきかせでイベントがスタート。
くろくんの新しいおはなしに、子どもたちもスクリーンにくぎづけです!
それから、お楽しみのワークショップがはじまります。
配られた画用紙に、いっしょうけんめい文字を書く子どもたち。
メッセージカードに、くろくんへメッセージを書こう!というワークショップなのですが、
あれれ? みんな、白い紙に白いクレヨンで描いたら、見えないよ…?
だけど、これに水彩絵の具を重ねると…、
メッセージが浮き出てきました! クレヨンの油分が水彩絵具をはじいて、こんな風に文字が現れるんですね。
実は、これは、『くろくんとちいさいしろくん』のおはなしにちなんだ「はじき絵」という技法。
今回のおはなしでは、くろくんたちのところへ、迷子の小さいクレヨン「しろくん」が現れます。みんなは、しろくんを仲間にお迎えするのですが、おはなしの中で、しろくんが、こんな風に「はじき絵」を使って、くろくんたちへメッセージを残す場面があるんです。
完成したメッセージカードは、ステージで発表会!
絵本の作者・なかやみわさんも参加されて、それぞれのメッセージひとつひとつに頷きながら、とても嬉しそうに耳を傾けていました。
●なかやみわさんに、お話を伺いました!
───みんなとても楽しそうにメッセージカードを描いていましたね。「だいすき」、「またあそぼうね」といった、くろくんへの思いが書かれているものや、「くろくんにあげたい」と、車やウサギさん、迷路など、自分の好きなものを描いている子もいて、微笑ましかったです。
どのメッセージも心に残りました。 好きなものを描いてくれた子は、その子にとってすごく大事なものを「あげたい」と思ってくれたことがとても嬉しかったです。
───今回、白いクレヨンを使った「はじき絵」を子どもたちが体験しましたが、白いクレヨン「しろくん」はシリーズに初登場ですね。新作『くろくんとちいさいしろくん』のおはなしが生まれたきっかけを教えていただけますか?
今まで届いていた読者ハガキやお子さんからのお便りの中に、「どうして白いクレヨンがないの?」「白のおはなしが読みたい」という声があったことがきっかけです。自分の持っているクレヨンと比べて、なぜ白がないのか疑問を持ったのですね。最初、『くれよんのくろくん』を描いたとき、シリーズにすることを考えていなかったので、クレヨンのセットの中に白を入れていませんでした。でも、お子さんたちの願いに応えたくて、ずっと、いつか白いクレヨンのおはなしを作ろうと思っていました。「くれよんのくろくん」シリーズは、読んだ後、子どもたちに絵を描いて楽しんでほしいと思っておはなしを作っています。それを考えても、やはり白いクレヨンで絵を描くこともおはなしにしなければと思いました。
───今回、弟のような「しろくん」の登場で、くろくんが、ぐっとお兄さんに見えました。
おはなしがなかなか思いつかなかったときに、編集スタッフの方から、「小さいクレヨンがあってもいいのでは」というアイディアをいただきました。そこで、自分の持っているふつうのクレヨンと、小さめのセットのクレヨンを並べてみたんです。そうしたら、クレヨンたちが、お兄ちゃんと妹弟みたいな関係に見えました。
私は、子育てをしている中で、小さい子どもが自分よりさらに小さい子をいたわっている場面にたくさん遭遇しました。3歳の子が1歳の子に遊びを教えてあげたり、靴下をはかせてあげたり、小さい子も、本当に頼っていろいろ教えてもらっている。すごく微笑ましいし、成長を感じる場面でもあります。
そういうことを思い出して、異年齢の交流を「くろくん」の絵本の中で描けたらいいなと思いました。
それで、くろくんたちが、小さい白いクレヨン「しろくん」をいたわってあげるおはなしになりました。
───白いクレヨンを使った絵の技法はどのように思いついたのでしょうか。
小学校1年生のとき、写生大会でお寺の絵を描いたんです。瓦をクレヨンで描いて、水彩絵の具で色を塗ったら、絵具がきれいにクレヨンの色をはじいて、それは見事な絵が描けました。それを思い出したとき、「はじき絵」で、白い画面に白いクレヨンで描いて、サプライズが出せる場面になるのでは、と思いました。 他の色のクレヨンに白を重ねて描く場面は、実はうまくいくか最初は自信がなかったんです。でも実際に実験してうまくいったので、もうひとつ白を使った絵として表現できました。
───今日イベントに参加した子どもたちは、くろくんの世界をめいっぱい満喫していましたね。これから『くろくんとちいさいしろくん』を読む子どもたちに、この作品をどんな風に楽しんでほしいですか?
小さいお友達をいたわる気持ちや、自分とは違う部分があっても受け入れよう、という気持ちを学んでもらえたら嬉しいです。いろんなお友達を、差別なく自然に受け入れてもらえるようになってほしい。いつかは別れるかもしれないけど、でもやっぱり友達。この絵本では友達との別れも描いています。別れた後にそれぞれの場所や生活があるけれど、ときどき思い出したり、離れてから本当の友情って始まると思うんです。そういうことにも気づいてもらえたら嬉しいです。
───最後に絵本ナビ読者へメッセージをお願いします!
子どもたちは、幼稚園や保育園など、集団に入ることでたくさんのことを学びます。
思い通りにいかなくて嫌な思いをしたり、我慢することもあるけれど、いっぱいいろんな友達がいて、楽しいこともたくさんある。そういうところに怖がらずに入っていけるように、くろくんの絵本がお手伝いできたらいいなと思います。これからもくろくんのおはなしは続いていきますので、楽しみに待っていてください!
───ありがとうございました!
9/11より、くろくんフォトスポットが「くろくんキャラバン」として首都圏の書店を中心に巡回するそうです。今回のイベントは「くろくんキャラバン」の出発式でもあったんです。
旅するくろくんに、皆さんも、ぜひ、会いに行ってみてくださいね!
くろくんキャラバン巡回予定
・9月11日(月)〜9月19日(火) 三省堂書店池袋本店
・9月19日(火)〜9月26日(火) 有隣堂テラスモール湘南店
・10月23日(月)〜10月30日(月) くまざわ書店宇都宮店
・10月30日(月)〜11月13日(月) TSUTAYA明文堂レイクタウン
・11月13日(月)〜11月27日(金) 柏の葉蔦屋書店
ただいま、全国の書店店頭では「くれよんのくろくん」ディスプレイコンクールを開催中!
グランプリに選ばれた書店では、なかやみわさんのサイン会を実施されるそうです。