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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2010.04.20

たかいよしかずさん
絵本作家

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きっかけは教育実習で・・・

─── 絵本作家になりたいと思われたきっかけ、というのはあったのでしょうか?

きっかけは、大学の4回生の時に、母校の中学校に教育実習に行ったときです。先生になるつもりはなかったんですけど、行く以上は、「こんなこと教えてあげたいな」っていうことを作っていって。そしたら先生には「いや、学校のカリキュラムがあるから、それに沿ってくださいね。人物デッサン」と言われて。「人物デッサン、僕一番嫌なやつやんか」って思いながら。

でも最後の日に、その頃友達と作っていたアニメーションを生徒に見せてあげたりして、「今学校で教えてもらってることはほんの一部のことで、美術っていう世界には、もっといろんなことが沢山あるんですよ」っていうことを、伝えたんです。その時に、美術の先生だったらできそうかなって思ったんです。でも、今の中学校は、生活指導のできる人が先生になるべきなんだと思いました。ただ、自分の中には、子どもたちに伝えたいことがある気がしたんですよ。じゃあ、何が伝えたいかなって、どうやって伝えられるのかなって思った時に、「それなら僕は、将来絵本作家になって、子どもたちに絵本を通していろんなことを伝えてあげられたらいいな」と、その時決めたんです。

だからって、学校を卒業してすぐに絵本作家になれるわけではないので、イラストレーター、デザイナー、キャラクターデザイナーといろいろ仕事をしてきました。そこから段々と縁があって、幼年雑誌などのお仕事をさせてもらえるようになって。そこがスタートですね。

─── ミキハウスさんの本のディレクションもたくさん手がけられるようになったとお伺いしました。

たかいよしかずさんちょっとずつ声がかかるようになって、だんだん絵本界の方向に来たときに、今から多分14〜15年ぐらい前ですかね、ミキハウスさんのお仕事をスタートさせてもらって。この10何年で、多分50冊以上は絵本を作らせてもらっているんですよ。ミキハウスさんの場合は、音の出る歌の絵本なんかを沢山出させてもらってるんですけど、それは僕が絵を描いてるのではなくて、もともとうちの会社のデザイナーさんが作ったキャラクターが、ミキハウスさんの出版の方のキャラクターに決まって、ラフは僕が担当の方と打ち合わせして全部描いて「これ、どうですか」「OKです」、と決まればそれをイラストを描いていただく方に「このまま絵を描いてください」って言って。僕がディレクションを全部やってたんです。

本当にそこでいろんなノウハウも勉強させてもらったし、ちょっとずつ自分のオリジナルなキャラクターやイラストでお仕事がいただけるようになって。その頃、マーブルわんちゃんのキャラクターや他の仕事が一斉にスタートした感じでしたね。どんだけ仕事しててん、すごいやん、そのときの僕って、って(笑)。

ブラウンベアファミリーの布えほん マーブルくんのいちにちブラウンベアファミリーの布えほん マーブルくんのいちにち

作・絵:おくだちず
出版社:三起商行(ミキハウス)

※たかいさんがディレクションされた最新作品は「マーブルくんのいちにち」という布えほん!遊びながらあいさつやしつけを学べてしまう、充実した内容になっています。

小学生に大人気となった「怪談レストラン」シリーズ

─── たかいよしかずさんといえば、「怪談レストラン」を思い浮かべる小学生のファンもたくさんいるでしょうね!

『怪談レストラン』は、会社に電話がかかってきたんです。「童心社といいますが、今度怪談話の本を出したいので挿絵の絵をお願いしたいんです」と。「すいません、僕、怖い絵は描けないんです。かわいい絵だったら描けるんですけど。」と言って一瞬断ろうとしたんですよ。そうしたら、担当の方が「いや、たかいさんの作品は絵を見て知ってるんです。お話が怖いので、挿絵は怖いような、かわいいような絵が希望なのでお願いしたいと思いました。」と言われて。それを聞いて、「大丈夫です、やります」と自信満々に答えました。自身満々に答えたものの、原稿を送ってもらって読んだら、おばけよりも人間がいっぱい出てくるんですよね。「しまったー」と思いました。人間描くのはあまり得意ではなかったもので。

怪談レストラン1 幽霊屋敷レストラン 怪談レストラン2 化け猫レストラン 怪談レストラン3 殺人レストラン 怪談レストラン4 幽霊列車レストラン 怪談レストラン5 妖怪レストラン
▲結構怖い話が収録されていますが、たかいさんの絵がほっとさせてくれますね。
「怪談レストラン」シリーズの挿絵は、たかいよしかずさんと、かとうくみこさんが担当されています。

なので最初は、人間を描く練習を沢山したり、おばけが出そうな場所を探したり。そしたら、本当に偶然に目の前にいかにもな廃墟が現れたことがあって・・・。それは本当に怖くて、でも写真は撮って。結局写真には何もうつってなかったんですけど、自分が小学生の時に感じた怖いという気持ちが体の中にがーんと入ったんです。だからスタートできたんだと思いますね。仕事を始めるにあたって、自分がどれだけ気持ちを入れられるかというのは大切なところやなって思いました。
 僕はデザイナーなので、このシリーズのデザインも任せてもらいました。最初は全5巻だったんです。「表紙は全部真っ黒にしてください」と言われたんですけど、「それは怖すぎるからダメじゃないですかね」と。それで今のカラフルな表紙になりました。今では全50巻プラス別冊3巻が出てきます。

最後に・・・

─── 絵本作家になられて「ああ、楽しいな」と思う瞬間だったり、「よかったな」と思う瞬間というのはありますか?

さこももみさん僕は毎年神戸でずっと個展をやっていたんです。14〜5年間。震災の前からずっとやっていて、震災が起きた前の年にもたくさんお客さんに来ていただいて。

震災の後、僕には何ができるのかって考えたんです。そんな時、友達のイラストレーターが大阪で個展をしたので見に行ったら、そこでその子が作ったポストカードを売っていて。その売り上げ金は全部震災の復興の為の寄付に回します、と書いてあったんです。「あっ、これやったらできるやん」と思って、僕も始めたんです。僕一人の力では知れてるので、知り合いのイラストレーターの人に声をかけさせてもらって。そしたら、そこからどんどん、どんどん紹介してもらって、ものすごい数が会社に来たんです。それを、いろんな人が個展やってる会場や、知り合いのギャラリーさんに行って「これ置かせてください」とか頼んで。集めたお金を、じゃあどこに寄付するのが一番いいかなって考えたときに、やっぱり子どもたちやなと思ったので、「あしなが育英会」というところが子どものためのケアハウス、レインボーハウスというのを建てたいというのが掲載されていたので、そこに全部寄付したんです。なんぼ寄付したかもう全然覚えてないですけど。

本当に沢山の人が「使ってください」って言って送ってくれたんです。長新太さんからもポストカードが届いたときには、もうびっくりしたんですよ。「長新太さんから来たよ。どっからこんな話回っていったんやろ?」と思ってね。黒井健さんが「私はポストカード作ってないんで、テレホンカードを送ります」って言って送っていただいて、本当に嬉しかったですね。こんな自分でも、自分のできることで人の役に立つことがあるんやと思ったら、この仕事についてよかったなと思いました。

あと、実はうちの会社で今年新入社員が二人いるんですけど、そのうちの一人の子が、小学校6年のときに初めて僕の作品をその神戸で見て、将来私はこういう仕事に就きたいと思いましたって言うんです。そんな子がうちの会社に就職するんですよ。「うわぁ、やっぱり個展は止めたらあかんねやな」って思ったし、そういう人たちとしゃべったときに、「ああ、この仕事やっててよかったな」って、すごく思います。でも、同時に責任というものもすごく感じますね。

─── 最後に、絵本ナビの読者に向けて、メッセージをお願いできますか?

子ども達には何でも体験させてあげてほしいですね。その入り口が絵本で、あ、こんな世界もあるんやったら、じゃあ今度、実際そんな所に行こうとか。例えば昆虫の博物館みたいなお話を読んだら、そういう所に行ってみようかとか、そういう入り口として絵本があれば、すごいいいと思います。

僕は実は小学校のときには、親から「本読め、本読め」ってずっと言われてたけど、親が言う本って面白くないんですよ。何か歴史の本とかね。でも、小学校の5、6年生の担任の先生が美術大学出の先生で、図画・工作にすごい力入れていて、その先生がすごい好きで。その先生がクラスに読書表というのを貼ったんです。「本を1冊ずつ読んだら、このグラフを1個ずつ塗りなさいね」と言って。僕は、負けん気だけは強かったから、「えっ、じゃあ今まで本あまり読んでなかったけど、取りあえず読んでみよか」と思って、図書室に初めて行ったら、SFの本とか、面白い本がいっぱいあったんですよ。初めて「こんな本も学校の図書室にはあんねや」って知ったんです。そこから本が好きになって、でも学校の図書室は、自分が好きそうな本は大体読み尽くしたから、じゃあもう図書館に行こうと思って、家から自転車で二駅ぐらい向こうの市立の大きい図書館まで行ったりしてね。

そういう経験もあるから、図書館はやっぱり親が安心して子どもを遊びに行かせられる場所であったらいいんちゃうかなと思ったんです。図書館で個展させてくれるというお話があったので、「子どもが本を読む部屋に作品飾らせて」って言ったんです。今まで図書館に来たことのない子どもが、僕の作品が見たいがために来て、ちょっと騒がしくなるかもしれへんけど、ぐるぐるして「あ、作品の横にこんな本もあるやん」と思って、手にとって見てくれたら、そこからまず1歩をスタートできるんちゃうかなと思ったんです。

そんな風に、僕みたいなきっかけになった子もおったら、それが一番いいことやなと思って。本や絵本を読むことで、その世界にどれだけ浸れるかとか、人の気持ちに立てるかとか、そういう入り口であってほしいなって思います。

─── ありがとうございました!

記念撮影 最後に記念にぱちり。

ここではお伝えきれなかったのが残念なのですが、本当はもっともっと色々な話をしてくださったのです。今まで出会って感動した方の話や、イラストレーターとしてのお仕事の話、高校や大学で授業をされた時の話などなど・・・。出会いや発見をとても大事されているたかいよしかずさんならではのエピソードの数々に惹きこまれてしまい、あっという間に時間が経ってしまったのでした。
その豊富なイマジネーションとパワーで、今度はどんな絵本やキャラクターを生み出してくれるのでしょう、楽しみですね!

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絵本ナビ編集長『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』2月24日発売!

たかい よしかず【たかい よしかず】

  • 明治製菓「マーブルチョコ」キャラクターの「マーブルわんちゃん」、大阪・ミナミの千日前商店街のマスコットキャラクター「みにゃみん」など多くのキャラクターデザインを手がけるとともに、イラストレーターとしても活躍中。挿し絵に、「怪談レストラン」シリーズ(童心社)、絵本にとびだす絵本『きょうりゅう』『ゆうえんち』『たべもの』(ミキハウス)、『こえがきこえる ワンワンおめん』「シール絵本シリーズ」(ポプラ社)、『へなちょこポヨヨンおえかきブック』(講談社)、「おはなし・くろくま」シリーズ(くもん出版)など多数。


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