新刊
トラといっしょに

トラといっしょに(徳間書店)

美しいイラストで描いた心に残る絵本

連載

紙芝居っておもしろい! 実践&体験レポート

2016/11/17

【連載】紙芝居アカデミー2016 とよたかずひこさん講演会

【連載】紙芝居アカデミー2016 とよたかずひこさん講演会

「ももんちゃん あそぼう」シリーズや「おいしいともだち」シリーズなど、赤ちゃんに大人気の絵本を生み出している絵本作家のとよたかずひこさんは、『でんしゃがくるよ』や『はい、タッチ』といった、楽しい紙芝居もたくさん発表しています。「紙芝居を作るときも、絵本を作るときも、大事にしているのはお母さんと赤ちゃんの反応です」と語るとよたさん。本連載の最終回は、「紙芝居アカデミー2016」でのとよたかずひこさん講演会の様子をレポートします。
紙芝居の作り手の方から、直接、制作についてのお話を伺えるという貴重な機会。参加者の皆さんがワクワクと期待に胸を膨らませる中、とよたかずひこさんが登場しました。

紙芝居の実演をしながら、作品を作ったときの思い出や、作品に対する思いを語ってくれました。

『でんしゃがくるよ』
ぼくは日常の子どもたちとの生活の中で、おはなしの種を見つけることが多いです。この作品も、娘たちが小さいころ、毎日のように見に行った、西武新宿線の線路をモデルにしています。ラストの車掌さんの演出は、実際にぼくと娘が体験したことです。この紙芝居を演じるときのポイントは、1本電車が通過した後の「間」。この「間」を大切に演じると、本当に電車を待っているときのリアリティが出せます。
『はい、タッチ』
ぼくは、今でも近所の子どもたちと野球をするのが大好き。……といっても、約束しているわけではなく、決まった日の決まった時間に、野球道具をもっていつもの公園に出かけます。そうするとそこにいる優しい子どもたちがぼくのことを気にして、一緒に遊んでくれるんです。もう何十年もそんなことを続けていますと、小学校だった子が中学になり、高校になり……と、ゆる〜く世代交代をしてきます。大きくなった子どもたちとはときどき、道ですれ違うこともあります。ぼくはあるとき、以前野球でお世話になった男の子と道でばったりと再開しました。ぼくは彼とすれ違うとき、何気なく手を前に上げました。すると彼はぼくの手に「ハイタッチ」をしてくれたんです。その一瞬のハイタッチから、この作品が生まれました。
●絵本、紙芝居を作ることになったきっかけは?
絵本もそうですが、ぼくの中では子育てが大きなきっかけです。子どもが生まれるまでは絵本にほとんど出会ってきませんでした。でも、子どもが幼稚園に入ると、毎月絵本をもらってくるんです。その月刊絵本を寝る前に読み聞かせをしていく中で、はじめて「絵本」を正面から眺めました。それで、絵本を夢中で読んでいる娘たちに喜んでもらおうと、ぼくも見よう見まねで絵本を作ってみたんです。もともとフリーのイラストレーターをしていましたから、絵本を描くのは簡単だろうと思っていたんです。それで、できた絵本を無謀にも出版社に持ち込みに行きました。今思うと、あの程度のものを良く見せに行ったな、出版社の人もよく丁寧に見てくれたな……と思います。結局、絵本作家として芽が出たのは50歳のとき、『でんしゃにのって』(アリス館)を作ってからでした。
●「紙芝居を描くとき」と「絵本を描くとき」の違いについて
ぼくの紙芝居に『おむすびくん』という作品があります。この作品を作ったとき、担当編集者さんから「絵本にできませんか?」と相談いただきました。ぼくは、紙芝居は紙芝居、絵本は絵本として作ることにこだわっていましたから、編集者さんからの言葉がなければ、「おむすびくん」を絵本にしようとは思わなかったと思います。実際に絵本に作り直すことをはじめてみたら、やり方がだいぶ違うので戸惑ったのを覚えています。絵本は絵と文字が同じ場面に出てくるけれど、紙芝居は文字が紙の裏側に載っています。絵本は「のど」という製本で織り込まれてしまう部分があるので、真ん中に重要な絵を描くことはできませんが、紙芝居は「のど」がないので、真ん中に絵を描くことができます。いろいろ試行錯誤を繰り返し、「おいしいともだち」シリーズ1作目の『おにぎりくんがね……』が誕生しました。
●紙芝居の舞台を使うことの意味
講演会で子どもたちの前で紙芝居を演じるとき、必ず舞台を使っています。舞台の扉を開けているとき、「これから何がはじまるんだろう……」と目を輝かせてこちらを見ている子どもたちの様子を強く感じることができるからです。それと、紙芝居の「ト書き」には演じるときのポイントなども描いてあって、ぼくの初期の作品『がらがらでんしゃ』では、「画面を上下に細かく揺らす」など舞台がないと演じることが難しい、細かい指示を入れています。もちろん、紙芝居舞台を持っていない保育園や幼稚園が多いことも把握していますので、最近では演じ方があまり複雑にならないよう、工夫をしています。
●赤ちゃんに向けた作品を作るとき
ぼくは赤ちゃんから楽しめる絵本を多く作っていますが、一言で「赤ちゃん」と言っても、「1ヵ月」と「10ヵ月」では、からだの大きさもできることも全く違います。なので、赤ちゃん絵本では赤ちゃんの月齢をどう考えて作品作りに反映させるかが、とても重要になるんです。ぼくの場合は、「8か月以降」の赤ちゃんが楽しめるように意識しています。それは、紙芝居でも絵本でも同じですね。
●とよた流紙芝居の作り方
よく「作品を作るときは、文章が先ですか? 絵が先ですか?」と聞かれますが、ぼくの場合は同時です。まず、小さな紙に鉛筆でいたずら描きをするんです。物語の発想は頭の中だけでなく、手先指先から作っていく感じです。手を動かす作業を続けていくと、次第にキャラクターが決まっていきます。同時に言葉も浮き上がってきます。「ももんちゃん あそぼう」シリーズの「ももんちゃん」などはまさにこうして生まれたお話ですね。
●紙芝居の魅力とは……?
ぼくは、講演会などの依頼があると、必ず絵本を読み聞かせをして、紙芝居を演じます。作り手からすると、講演会で子どもたちに作品を見せることは、読者の息遣いや肌触りに、直接触れることができる貴重な機会をいただいていることです。特に観客すべてを見渡せる紙芝居は、作品を通して子どもとのキャッチボールが楽しめるので、とても重要です。そこから、次につながる作品を生み出すきっかけにもなります。
終始、笑顔で紙芝居と絵本についてお話をされるとよたさん。今回、お話を伺って、一作一作の紙芝居がとても温かく、優しい思いにあふれていることを改めて感じました。とよたさんの自作を演じる姿もとても堂々としていて、改めて紙芝居の面白さを感じることができました。
全5回に分けて、紙芝居の魅力をお伝えする連載企画も今回で最終回。この企画を通して、紙芝居を演じてみたいと思う方が少しでも増えていくととても嬉しいです。


タグ

【連載】最終回 廣嶋玲子さんインタビュー
全ページためしよみ
年齢別絵本セット