昔、にわとりをたくさん飼っていたお百姓が死んで、息子が一人残されました。こころのやさしい息子でしたが、のろまで、じゅうぶんな世話ができないうちににわとりの数はどんどん減り……ついに家までなくしてしまいます。
息子は、後をついてくる一羽のめんどりと、旅に出ることにしました。
森や山では楽しい旅でした。でもかんかん照りのはらっぱに出てから、少しずつ食べ物はなくなり、とうとう息子はめんどりを食べてしまおうかと考えます。けれども、めんどりの心臓がうごくのを感じて思いとどまります。
やがて真っ暗な森に迷い込んだ息子とめんどり。夜の魔物とのハラハラドキドキのなぞなぞ対決がはじまります……。
『こぎつねコンとこだぬきポン』などの著作がある松野正子さんの文章に、『なぞなぞのすきな女の子』の大社玲子さんが挿絵を描いた昔話ふうのお話。
暗い森の場面では、物音ひとつきこえない暗闇に閉じ込められてしまったこわさを感じます。
寒いまっくらな闇で魔物の目が光り、袋の中のめんどりだけがあたたかい……。
20数ページにわたる、闇の中のなぞなぞ対決の場面はみどころです。
最後にはこのお話の題名がなぜ「にわとり城」なのかがわかりますよ。
本書は「こぐまのどんどんぶんこ」シリーズの一冊。本を読むのがちょっと苦手な子も、どんどん楽しく読めるようにと工夫された幼年童話シリーズ。小学校低学年からの1人読みにぴったり。絵本の次に何を読もうかと迷っているお子さんがいたら、ぜひ手渡してあげたいシリーズです。
さて、にわとり城は「城」というからには、おひめさまがいそうなものですよね。そのとおり! では、おひめさまは一体だれだったのか? なぜ魔物の魔法は解けたのか? それは読んでのお楽しみ。最後のにわとりだらけの素敵な絵とともに、楽しく味わってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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