野原の大きな木の下に住む、大食いのへび。
口はほら穴みたいに大きくて、お腹はまるで、まるたんぼう。
いつもお腹をすかせ、なんでも丸のみにしてしまうんですって。
まず、やってきたのはかえる。
「わたしを たべるき?」「もちろんさ」と、へびは、ちょっぴりこわい目つき。
「わたしは〜 とっても〜 いそいでいるのよ〜♪」とかえるが歌っているけどお構いなし。
ひとくちでぱくっと丸のみに。
すると……おやおや?
へびのお腹の中から、声が聞こえてくるんです。
「ああ、もうっ! これから かえるがっしょうだんに うたを おしえに いくところだったのに!」
どうやら、かえるは歌の先生だったみたい。
お腹の中で発声練習をはじめ、思わずへびも一緒に「ア〜ア〜ア〜♪」。
大声を出したそのひょうし、へびの口からかえるはぴょーんと飛び出して、かえる合唱団の指揮をはじめてしまいました。
すごすごと「あんなちっぽけなやつを食っても腹いっぱいにならないし、いいさ」と負け惜しみを言いながら引き下がるへび。
お次はぶた、そしてうさぎと、出会ったものをこの調子で丸のみしていくのですが……。
いったいどうなるのでしょう?
「ぼくを たべるき?」「もちろんさ」
「あたしを たべるき?」「もちろんさ」
繰り返されるへびと生き物たちのやりとりが楽しい!
「きみに たべられてる ひまは ないんだ」
「あたしを たべるの、きょうは やめておいたほうが いいとおもうけど」
なぜ生き物たちはそんなことを言うのか、ユーモラスなおはなしの続きをお楽しみに。
“丸のみ”のおもしろさを生かした花田鳩子さんのおはなしは、会話文のリズムが楽しく、読み聞かせにぴったりです。
植垣歩子さんが描く生き物たちの、生き生きしたやさしい線と色、親しみやすい世界観も素敵です。
最初はこわそうだったのに、だんだん、ちょっぴりまぬけで憎めないへびに。
困惑した顔は気の毒だけど笑っちゃうのです。
物事のつながりがわかるようになってきた、2〜4歳くらいの子どもたちにちょうどいいおはなし絵本。
描かれた絵と会話から、その先の展開を予想しつつ、子どもたちと一緒に楽しんでくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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