ころころころがるおだんごを追いかけたむすめが、鬼の元へ行き着き、おだんごを作らされるお話。鬼の家には、おだんごを食べたがる鬼がたくさんいて、おそろしい思いでむすめはおだんごを作ります。粉が足りなくなると、不思議なおたまを鬼から手渡されて……。
日本の四国地方に伝わってきた昔話で、小説家・中脇初枝さんが再話したもの。途中、ドキドキするところもありますが、最後はハッピーエンド。あまり怖くない鬼なので、幼いお子さんも楽しめます。この話のように、鬼の宝のおたまやしゃもじを持って帰ってくる物語は全国各地に伝わっているそうです。
とにかく本書はMICAO(みかお)さんの刺繍と布の絵がすてき! ステッチで輪郭をとられた赤い着物姿の女の子はかわいらしく、鬼たちの姿もユーモラス。鬼の毛やひげ、川、植物など、縫い目をたどってずっと眺めていたくなります。
本書は「女の子の昔話えほん」シリーズの1冊。男性が主人公になりがちな昔話の中で、女性がお話の主役となるさまざまな伝承を集めているのが特徴です。たとえば同シリーズには他に、フランスのお話『花をさかせたがらない小さなキャベツ』、ハイチのお話『わたしがテピンギー』などがあります。
お話自体は、男の子や女の子関係なく、現代に読んで違和感なく味わえる昔話です。これからの時代を生きる子どもたちに、ぜひ肩の力を抜いて楽しんでもらえたらいいですね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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おだんごが
ころがる先にいたのは?
ころがるおだんごをおいかけて
鬼の家にきてしまった女の子。
おだんごを気にいった鬼たちに
もっと、たくさん
つくるようにいわれますが……!
宝をもちかえる女の子の昔話が
刺繍と布でえがかれた絵本になりました。
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おひるになったので、
むすめは、おだんごを たべようとしました。
すると、おだんごが、
ころころころころ、ころがっていきました。
むすめは、もうひとつの おだんごを
たべようとしました。
ところが、
そのだんごも、また、
ころころころころ、ころがっていきました。
あとには もう、ひとつしか
おだんごは のこっていません。
むすめは、しっかりにぎって
たべようとしましたが、
さいごのおだんごも、また、
ころころころころ、ころがっていきました。
むすめは おだんごを おいかけて、
はしりだしました。
(本文より)
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女の子の昔話えほんシリーズについて
あなたが知っている昔話の主人公は、男性が多いのではないでしょうか。女性が主人公の場合も、ひかえめでおとなしい女性ではないでしょうか。絵本になるのはそういう昔話が多いのですが、語りつたえられてきた昔話はもっと豊かで、へこたれずに自分なりの幸せをつかむ、いろんな女性たちが登場します。これまで知られてこなかった、そんな主人公の昔話を絵本にして、これからの世界を生きるこどもたちに贈ります。
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