作の石井桃子さんは、「ノンちゃん雲にのる」で、つとに知られています。
私の最初の出会いは、バージニア・リー・バートンの「 ちいさいおうち」「せいめいのれきし」の訳者としてでした。
多くの海外の名作の邦訳に携わり、先駆者としての位置付けは揺ぎ無いものです。
また、絵の中谷千代子さんの大ベストセラーの「かばくん」は、読まれた方も多いことでしょう。
物語は、かずちゃんとおかあさんが買物に行くシーンで始まります。
かずちゃんは、いつも先に行ってしまいますが、以外なところから現れます。
垣根の隙間から、じゃりの山のてっぺんから、穴の中からと、今の舗装された道路からは考えられません。
1979年の作品ですから、止むを得ないのですが、確かにそんな風景だったなと懐かしく思いました。
店並も、昭和の時代を感じさせるもの。
今のスーパー全盛時代と比すると、こうした八百屋さん、魚屋さんというのは、おかあさんと子供が歩いて出かける距離にあったからこそ、途中の出来事が貴重な体験となったことは間違いありません。
買物に出かけて帰ってくる、ただそれだけの話なのですが、かずちゃんとおかあさんのやり取りが、ほのぼのとした気持ちにさせてくれることでしょう。
かずちゃんの行為に、自らを重ね合わせることに楽しみを見出すことが出来る作品だと思います。