福島から転校してきた女の子のまやと、広島に暮らすだいじゅ。
福島から転校してきたというだけで、何を意味するかが解ってしまうほど「ふくしま」はとても意味のある場所になってしまいました。
ごく普通の女の子だけど、ごく普通の家庭で生活することができず、家族はわかれて非難生活。
何年経ったら帰れるのかも解らないのに、見た目には何事もなかったような廃墟の福島。
突然に避難勧告を受けた、不意の事故でした。
さりげなく描かれている、まやとは別の親戚と共に暮らす老父母のことを考えると、あきらめようのない災害に対する悲しみがこみ上げてきます。
広島に暮らすだいじゅには、遠い昔になってしまったけれど、広島で原爆を被爆した祖全がありました。
子ども同士のさりげないふれあいの仲に、二つの事実を埋め込んで、平穏でありながら、とても意味深いお話になっています。
原発反対の世相と、それに対峙するように原発再開の話が出てきている今、被害者はごく普通の国民であることを忘れてはいけないと感じます。
あとがきに、作者は思いを込めて長文を加えましたが、本文は抑制力のある素朴なお話。
読者に考えを押し付けるのではなく、問題提起となっているように思いました。