子ども向けの童話集として書かれているからでしょうか、作品それぞれの人物描写がはっきりしていて、感情移入しやすいのですが、内容は大人としても心に響く童話集です。
「泣虫小僧」の啓吉の境遇には、大人たちに振り回される子どもの悲しみを見ました。再婚した母親は、前夫との子どもの啓吉は疎ましいのでしょう。薄幸の中で、親に見捨てられた啓吉のこれからがとても気になりました。
「小さい花」には、林芙美子が過ごした瀬戸内海の風景がしのばれました。
「僕の日記」は、日記を見せ合う家族の日記という、不思議な設定で、本来は個人的な内面暴露の文のはずの日記が、冗舌にコミカルに描かれていて、林芙美子の遊び心を感じました。