1999年度のコールデコット賞受賞作品。
アメリカの豪雪地帯の小さな農村に生まれたベントレーが、雪に魅入られて、雪の写真家、研究家として生涯を費やした伝記です。
農夫でありながら、世界中に雪の美しさ、神秘的な魅力を伝えた功績は高く評価されているようです。
雪の研究家と言えば、
「雪は天から送られた手紙である」という言葉で知られる中谷宇吉郎氏が、日本ではつとに知られていますが、氏が雪の研究を始めたのは、ベントレーの写真集がきっかけとのこと。
そんな背景を考えながら読み進めると、ベントレーの生き様に惹き込まれて行くことでしょう。
小さい頃から、ベントレーは、雪の美しさは他の追随を許さないと思っていました。
友達が雪合戦している間も、顕微鏡で雪の観察に明け暮れていたのです。
でも、残念ながらスケッチしても、雪は描きおえる前に融けてしまいます。
そんなベントレーの気持ちを察した両親は、カメラ付きの顕微鏡を17歳の時に買ってあげるのですが、その金額は途方もないもの。
10頭の乳牛より高いというのですから、その高さが窺い知れます。
この両親の行為が、ベントレーの人生に大きく影響したのですが、親として最高の行為だと思います。
欲しいからといって、単に多くのものを与えるのではなく、子供に真に必要なものを与えることができる親になりたいものです。
その後は、亡くなるまでの経過が描かれているのですが、農夫との両立の部分の記載が全くなく、少し上辺だけの伝記の感があります。
また、雪の結晶の写真が殆どないので、その美しさが伝わってこないのが非常に残念です。
その雪に魅入られて、情熱をかけて人生を雪に注いだのですから、何がそんなに彼をかき立てたのか?という証左として、そんなページがあって良かったのではないかと思いました。
木版画の絵は、ベントレーという朴訥な人柄を象徴しているようで、とてもマッチングしていて、好感が持てました。
野心なく、一途に雪の美しさを他人にも見てもらいたいと願ったベントレー、その何ら気負いない彼の生き様が、心に染み入る作品でした。
読み聞かせよりは、小学生が自分で読んで感じる作品だと思います。