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「情熱大陸」での9か月の取材の中で1冊の絵本が生まれました。のぶみさん 「情熱大陸」ナレーター・窪田等さんインタビュー

『ママがおばけになっちゃった』(講談社)で、絵本業界としては異例の53万部を突破した人気絵本作家ののぶみさん。NHK Eテレ「みいつけた!」の「おててえほん」などでも、ご存知の方も多いのではないでしょうか? 今回、のぶみさんの新作『いのちのはな』(KADOKAWA)についておはなしを伺います。実はこの作品、「情熱大陸」での9か月の取材の中で生まれた絵本なのです。今回は特別に「情熱大陸」のナレーターとしてもおなじみの窪田等さんとの対談が実現しました。絵本作家とナレーターという異色な出会い。どうぞお楽しみください。

いのちのはな
いのちのはなの試し読みができます!
作:のぶみ
出版社:KADOKAWA

おかあさんからチューリップの球根をもらったかんたろう。ところが次の日からなんと病気に! 水がもらえないプーは花を咲かせることができるのでしょうか? のぶみ自身の人生とすべての思いが詰まった渾身の一冊!

「情熱大陸」の取材の中で生まれた1冊のチューリップのおはなし。

───今日はのぶみさんと窪田さんとの対談ということで、どんなお話が飛び出すのか、とてもワクワクしています。

のぶみ:ぼくもです。「情熱大陸」は自分が出演することが決まるずっと前から大好きで、毎週楽しみにしている番組なんです。そのナレーターとして1回目から関わっている窪田さんとお話しできるなんて、信じられないくらい嬉しいです。

窪田:ぼくの方こそ、のぶみさんとお会いできてとても光栄です。ぼくは普段、ナレーターという立場なので、出演者の方とお会いすることはありません。なので、どんな話が飛び出すのか、ちょっとドキドキしています。

───窪田さんは、のぶみさんのことを以前からご存じでしたか?

窪田:恥ずかしながら、今回お会いすることになってはじめて知りました。ただ、ぼくには娘と孫がいるんですが、娘がのぶみさんのことをよく知っていて、今日、のぶみさんに会うことを伝えたら、とても驚いていました。

のぶみ:それはとても嬉しいです。

───まずは新作『いのちのはな』について伺えたらと思います。おはなしの主人公はチューリップの「プー」。のぶみさんの作品の中でも花が主人公の絵本は珍しいと思います。今回、チューリップを主人公に選んだ理由は何ですか?

のぶみ:タンポポなどの雑草はその生きざま自体がサバイバルだと思うんです。種となって飛んでから、ちゃんと地面の上に降りられるかもわかりませんよね。でも、チューリップは比較的人の手がかかっているというか、植えられた場所で育つような花だと思いました。そのチューリップが今回、いろいろなことがあって、咲くのがとても困難な状況に陥る。そこからどうやって自分の状況を受け入れて立ち向かっていくか、その姿を描きたいと思いました。

窪田:持ち主であるかんたろうが、長い間病気で臥せってしまって水をもらえなくなり、枯れかかってしまうプー。でも、そこからの発想の転換というか、開き直り方が「こうなるんだ!」とビックリして面白かったです。

のぶみ:これはぼくの絵本の作り方のひとつのセオリーでもあるんですが、ラストに感動する展開を持ってくる場合、最初からシリアスにしてしまうと子どもたちは飽きてしまうので、前半は思いっきり笑える展開にするんです。

窪田:なるほど。だからプーが干からびそうになったとき「ねっこを のばすしかない! ねっこ ひゃくれつけん! あーちょちょちょちょちょちょちょーーー!!!」って言わせたんですね。ここは笑っちゃったなぁ。あと、ねっこを伸ばしてもコンクリートが邪魔をして水のある場所に行けなかったとき、「さいごに はなを さかせたかった。できることなら マグロを あたまに のせて、すめしで ギュウっと にぎって ほしかった。」っていうのも、面白いですよね。

のぶみ:ありがとうございます。どうしてお寿司なのかというと、かんたろうの好物がお寿司だという設定があるんです。

───絵本の中にも、病気で寝ているかんたろうがお寿司の絵を見ている描写がありますよね。

窪田:あ、本当だ! すごいなぁ。ぼくは文章しか見ていなかったから、こんな細かいところにもヒントがあるなんて分かりませんでした。

のぶみ:大人は文章を見る人が多いですよ。でも、子どもたちは絵本に描かれているものひとつひとつをじっくり読んでくれるんです。だから、ぼくの絵本は絵の中にすごくいろいろ描きこむようにしているます。今回もぼくの絵本のキャラクターがそこかしこに登場しています。

窪田:それを見つけた子どもたちはすごく嬉しいですよね。

───ねっこを伸ばしても、水にたどり着けなかったプーは、タンポポの「ポポたろう」に励まされて、花を咲かせるために頑張ります。しかし、風が吹いてきて、鉢が倒れてしまい絶体絶命。ここの展開がとてもスピード感があって、ハラハラしますね。

窪田:ぼくは「ポポたろう」が好きですね。素朴で朴訥としていて、優しくて、いいやつだなぁと思いました。あと、そのあとに出てくるバラの「バーバラー」。彼女もすごくキーとなるキャラクターですよね。


ぽぽたろうとバーバラー

のぶみ:そうなんです。チューリップが中間だとしたら、タンポポの生きざまは先ほど話したように雑草だから、波乱万丈。バラはその対極で大事に大事に育てられる、とても安泰な印象がぼくの中にありました。なので、ポポたろうとバーバラー、そしてプーの三者三様の性格を描くことで、全体的にバランスを取れたらと思ったんです。

窪田:バーバラーが逆さまになってしまったプーを見て、「だれにも きづかれないまま きえちゃえば いいんじゃない? あなたは、いらない はな なんだから。」という場面。すごい強烈なセリフだと思いました。でも、ここまで言われたから、プーは意地でも咲いてやろうと思うんですよね。

のぶみ:このバーバラーのセリフは、最初「しんじゃえばいいじゃない」だったんです。でも、講演会などで参加者の前で読み聞かせをしたら、「“しんじゃえばいいじゃない”はあまりにもひどい」と言われたんです。ぼくもその意見を聞いて納得したので、「しんじゃえばいい」ではないけれど、同じくらい心に突き刺さる言葉は何だろうと考えました。いろいろな人にも相談しました。「なんて言われたら嫌だ?」って。そうしたら、「消えちゃえばいいじゃない」という言葉が出てきて、たしかにそれを言われたらとても傷つくと思って、採用したんです。

窪田:「きえちゃえばいいじゃない」……すごく、こわい言葉だよね。

のぶみ:そうなんです。でも、プーが咲くまであきらめずにいられたのは、このバーバラーの言葉があったからだとぼくは思っているんです。だから、たとえ周りが否定したとしても、この言葉しかなかったと思いますね。

窪田:話を聞いていると、のぶみさんはすごく文章にこだわりを持っているように思うんだけど、絵本は文章が主なんですか? それとも絵?

のぶみ:絵本作家さんによっていろいろなタイプの方がいると思うのですが、ぼくは断然、文章重視なんです。この『いのちのはな』も絵はほとんど直しをせずに描けたけれど、文章は今までで一番直したと思います。今のぼくの持つ力をすべて込めて書いたと思うので、もしこれで売れなくても、それは実力だったと納得すると思います。

窪田:直す部分は、どうやって見つけていくんですか?

のぶみ:声に出してひたすら読むしかないですね。ひとりで読んで、家族に読んで、講演会で何百人の人の前でも読みます。そうして、周りの反応を全身で感じるんです。「ここで笑いが起こった」とか「この部分はまだ伝わっていないな……」とか。それを受けて、文章を変えていきます。読者の方からよく「子どもに絵本を読んでいて、自分が泣いてしまいました」という感想をいただきますが、それはぼくが何十回と書き直して、より感情に訴える言葉、心に響く言葉を書こうとしているからなんです。

窪田:なるほど。そうやって考えて書いているから、プーの「いま さけたから すべてが これで よかった。」という言葉が生まれるんですね。

のぶみ:生きていると「どうして、ぼくがこんな目に遭うんだろう」というような、辛いことがたくさんあります。それでもくじけずに、ひた向きに頑張って生きていると、今回のプーのように、その辛さが全部覆る瞬間があると思うんです。それは、ぼく自身が体験したことでもあるんです。

───見返しの「制作秘話」にも描かれていますし、自伝などでも何度か語っていらっしゃいますね。

のぶみ:はい。ぼくは子どもの頃、自分は普通に会社員になって、結婚して、子どもができて……という未来予想図を描いていました。でも、全く違った。小学校でいじめにあって、2回自殺未遂を経験しました。中学生の頃は引きこもり。高校はその反動で不良になり、池袋のチーマーのリーダーをやっていました。どうしてこんなに嫌なことばかり起こるんだろうと悩む日々だったんです。でも、絵本と出会って、絵本を作ることは本当に好きなことだから、ただひたすら丁寧に丁寧に、作ることを徹底していったんです。そうしたら、徐々に作品が認められて「しんかんくん」シリーズや「ママがおばけになっちゃった」シリーズなど、ベストセラーを出せるようになったんです。

窪田:チューリップのプーはのぶみさんご自身を反映したキャラクターでもあったんですね。

のぶみ:そうですね。でも、誰もが一生懸命頑張っていれば、いつかどこかで「ああ、生きてて良かった」と心の底から思うことが起こると思うんです。そういう意味では誰もがプーになれるんだと思って描きました。

窪田:のぶみさんのお話を聞いてから、改めて『いのちのはな』を読むと、キャラクターひとりひとりが、とても愛おしい存在になりますね。ぼくは特に本を閉じた後に出てくる、展開も好きなんですよ。

のぶみ:ここは「情熱大陸」のプロデューサーさんに言われて、変更した部分なんです。プロデューサーさんは「『情熱大陸』では、ドキュメンタリーで追っていた人が、最後に亡くなってしまう場合でも、亡くなったまま終わることはしないんですよ。必ず、その人の残したものを視聴者が感じることができるようなラストにするんです。」と教えてくれたんです。

窪田:それで、このラストになったんですね。

のぶみ:プロデューサーさんの話を聞いたとき、ぼくもお世話になった絵本作家の先輩からの言葉や、生き様みたいなものを受け継いで、今があるんだと強く感じたんです。それって、結構誰にも当てはまるように思うんですよね。窪田さんはお世話になった先輩から受け継いだような感覚はありませんか?

窪田:そう言われるとぼくらの世界にも、たしかに、先輩方から受け継いで、若い世代に渡していくものがありますね。そうか、ぼくもプーも同じなんですね。

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のぶみ

  • 1978年、東京都生まれ。「ぼく、仮面ライダーになる!」シリーズ(講談社)や、「しんかんくん」シリーズ(あかね書房)、「おひめさまようちえん」シリーズ(えほんの杜)、『うんこちゃん』(ひかりのくに)など、170冊以上の絵本を発表。『ママがおばけになっちゃった』は40万部を超えるベストセラーに。ほか、NHK「おかあさんといっしょ」では、「よわむしモンスターズ」を、NHK「みいつけた!」では、「おててえほん」のアニメーションを担当。EXILEのUSAや漫画家・森川ジョージとのコラボレーション絵本の出版、内閣府「子ども・子育て支援新制度」(すくすくジャパン!)シンボルマークを手がけるなど、幅広く活躍している。Facebook、Twitterで積極的に情報を発信。

作品紹介

いのちのはな
いのちのはなの試し読みができます!
作:のぶみ
出版社:KADOKAWA
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