新刊
きみとぼく

きみとぼく(文溪堂)

谷口智則さん最新刊 全然違う「きみ」と「ぼく」の物語

絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  笑顔になる!しあわせいっぱい赤ちゃん絵本『ばあ〜っ!』石津ちひろさんインタビュー

子どもとの一体感を楽しんでください!

───石津さんは、翻訳、創作絵本、言葉あそび、詩などいろんなジャンルの作品を作っていらっしゃいますが、制作するときの心構えのようなものは違いますか?

翻訳と言葉あそびは似ています。型のようなものがあって、そこにうまくカチッとはまった!と思ったら、「あ、できた!」と思います。創作は自由だからちょっととりとめがなくて、先ほど言ったように、これでいいのかなって何回も何回も書き直します。詩はひとつ核みたいなものがあって、それをどう表現していくか試行錯誤します。それぞれアプローチが違いますね。
『ばあ〜っ!』のような創作絵本をゼロから作るときは、あかちゃんとひとつになれる、一体感を感じられるものができるかどうかがカギだという気がします。

───一体感、ですか?

最近ユウキくんみたいにちっちゃい子に『ばあ〜っ!』を読むようになって、反応を見たときに、私もはじめてわかったことがありました。絵本って、生きてる。おかあさんとあかちゃんの空気感が絵本に伝わって、絵本からもまたかえってくる。流動性があるというか、生きものみたいですよね。
このシリーズは子どもが認識しやすい色や、顔の表情が大きく描かれていることもいいんじゃないかしら。大学の教え子たちが出産するようになって新米ママになり、出産祝いに石津先生の絵本をもらってうれしかった、子どもが喜んだという声がここ数年届くようになりました。彼女たちの声からも、あらためてこのシリーズのよさを感じています。

───個人的には『おやすみ〜』がじんわり心に響くんです。ちょっぴり疲れていても子どもに「おやすみ〜」と読んであげるだけでなんだか自分も癒される…。なぜだろう?と不思議です。

リュウくんは、ピアノに「おやすみ」って言おうね、といわれて、鍵盤をたたきながら「おやすみ」と言っていました。マナトくんはお片づけをしながら積み木に「おやすみ」と声をかけていました。
孫みたいな子どもたちが、みんな自分の大好きなものに対して「おやすみなさい」と言いながらお辞儀をしているように見えるのは、無意識のうちに「ありがとう」の気持ちを伝えようとしているからじゃないかしら…と。『おやすみ〜』の中にはそんな発見も入っています。

───そうか。「おやすみ」は「ありがとう」なんですね!

目の前にいる子どもたちと、娘の小さいとき。そしてはるか昔の記憶もたぐりよせて絵本を作っているような気がします。たとえば自分がまだ小さい女の子で、弟がうまれたばかりで、父親と接していたときのこととか…。

私は3番目の女の子だったから、父親がすごく可愛がってくれました。寝る前に必ず「ちいちゃん」「はあい。おとうちゃん」「はあい。ちいちゃん」というやりとりをずーっと繰り返してから眠っていたんですね。父と子の密着感や、無償の愛で包まれていた記憶がありました。
でも私は4人兄弟の3番目で、どう振る舞えば周りが喜ぶかをなんとなく心得ている要領がいいところもあったし、内心、やりとりをしながら「いつまでこれをやるんだろう……」と淡々と思っていたのを覚えているんですよ(笑)。

───ええっ(笑)。

だけどそれがあとで思うと本当にありがたいことだったなと。迷惑がられても、可愛がりすぎるくらいに可愛がって、子どもはちょうどいいんだって思います。もし現実に周囲の大人から得られなくても……、絵本が決して代わりにはならないけれど、子どもへの「無償の愛」の「足し」になってくれたらいいなと思っているんです。

愛って、嬉しい反面、ちょっと重くて困る面もありますよね。でもあかちゃんがこの世に生まれ、人としてこの世に在ることを肯定されて支えられて……安心感をもって生きられるのが大事。無意識の安心感は、小さいときに作られる気がします。だから、愛は絵本からも大人からもどんどん降り注いだほうがいい。

───誰かが見守ってくれているという安心感が、絵本から感じられることもあるかもしれませんね。石津ちひろさんの思いがこのシリーズに溶け込んでいたのだと、お話をうかがってあらためて感じました。
最後に、絵本ナビの読者にメッセージをいただけますか?

『に〜っこり』『おいし〜い』『おやすみ〜』『ぷっぷっぷ〜』『ばあ〜っ!』の5冊の絵本が、お子さんとより親密になるための助けになったら嬉しいなあと思います。膝の上にぎゅっと抱っこして、声に出して…、お子さんと自分と絵本の一体感を楽しんでいただけますように。

───ありがとうございました!

石津ちひろさんにもうちょっと質問!

Q. 絵本を作る以前はどんなお仕事をしていたのですか?

A. フランスから日本に帰国後、バレエや音楽関係の舞台のセリフや、プログラムの翻訳の仕事をしていました。友達に通訳兼翻訳をしている人がいて、その人が忙しいときにときどき手伝っていたのですが、だんだん彼が通訳で忙しくなってきたので翻訳を私が引き受けてやるようになりました。バレエも音楽も好きだったので楽しかったのですが、そのうち絵本が忙しくなってそちらはやめてしまいました。

Q. 出産後は子育てをしながらお仕事されてきたと思いますが、娘さんが小さいときはどんなふうに?

A. 最初に出版された『まさかさかさま』(河出書房新社)の回文は、当時あかちゃんだった娘に授乳しながら、頭の中で作っていました。今でも回文は紙の上で書かず、頭の中に文字の映像が浮かぶので、頭の中で書きます。家では、私が原稿を書いていると、幼い娘も横でマルをいっぱい描いたりしてそばにいました。

Q. 娘さんが子どもの頃に読んでいた本は?

A. 長新太さんの『キャベツくん』(文研出版)が2、3歳の頃にすごく好きでした。4、5歳くらいのときのお気に入りは谷川俊太郎さんの『わらべうた 続』(集英社)。よくかばんに入れて持ち歩いていました。「ゆっくりゆきちゃんゆっくりおきて、ゆっくりがおをゆっくりあらい…」とかそういう詩が入っているの。不思議なんだけど、幼稚園の子なのに、挿絵もほとんどないような本をよく電車の中で開いてながめていたことを覚えています。

Q. 「リサとガスパール」シリーズの翻訳ももう長いお仕事ですね。

A. 娘が中1の頃にはじめたので、20年間近くになりますね。翻訳ができるといつも声に出して読んで、娘に聞いてもらいます。高校生くらいになると「リサはこんなこと言わないでしょう」とか「まだ私に聞かせる段階じゃないみたい」とか編集者の人が言いたくても言えないような手厳しいことを言ってくれるようになりました(笑)。


お庭のアジサイの前で

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現在、絵本ナビに登録がある作品だけで、266冊の著作がある石津ちひろさん。とても自然体で明るい雰囲気に、すっかり取材チーム一同ファンになってしまいました。これからもますますたくさんの作品が生まれていくのでしょうね。楽しみです!

インタビュー・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子

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石津ちひろ(いしづちひろ)

  • 1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。

作品紹介

ばあ〜っ!
ばあ〜っ!の試し読みができます!
作:いしづ ちひろ
絵:くわざわ ゆうこ
出版社:くもん出版
に〜っこり
に〜っこりの試し読みができます!
作:いしづ ちひろ
絵:くわざわ ゆうこ
出版社:くもん出版
おいし〜い
おいし〜いの試し読みができます!
作:いしづ ちひろ
絵:くわざわ ゆうこ
出版社:くもん出版
おやすみ〜
おやすみ〜の試し読みができます!
作:いしづ ちひろ
絵:くわざわ ゆうこ
出版社:くもん出版
ぷっぷっぷ〜
ぷっぷっぷ〜の試し読みができます!
作:いしづ ちひろ
絵:くわざわ ゆうこ
出版社:くもん出版
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