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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「あかちゃんがよろこぶ しかけえほん」シリーズ中央大学文学部心理学研究室教授・山口真美先生、絵本作家・ひらぎみつえさん インタビュー

あかちゃんは宇宙人?!

───顔、コントラスト、なくなること、ぐるぐる……、あかちゃんの好きなものをいろいろ伺いました。
今まで、意外とあかちゃん向けのこういうしかけ絵本は少なかったのですが、しかけ絵本というのは、あかちゃんにとって、いい刺激なのですね。

山口:そうですね。私たち大人からすると絵本って本だけど、あかちゃんにとっては本なんてわからないし、何だか分からないものです。道具のひとつとして見ているのだと思います。だから、触って、手も動かしたりと、感覚がいっぺんに刺激されるのはとても面白いのだと思います。あかちゃんって刺激的なものが大好きだから、今の時代は、タブレットなどを手放さずに見続けてしまったりすることもあると思います。ですがしかけ絵本も、タブレットと同じように、自分が触って動かすと何かが変わったり、消えてしまったり、それは素朴にあかちゃんをひきつけることだと思いますね。

ひらぎ:このしかけ絵本シリーズ、お子さんが自分で動かそうと夢中になって触っている様子をよく見せていただくのですが、しかけを触って、自分で動かせたときの顔ってすごく嬉しそうなんです。「やったぞ!」って満足そう。自分が世界を動かしている、そんな喜びがあるのかなと思いました。

───刺激という点では、タブレットやアニメーションのほうが刺激が強いと思うのですが、絵本との違いはなんでしょうか。

山口:今はタブレットですが、ビデオの刺激が強いと問題になった時代もありました。つまりその時代で一番刺激的なツールがあかちゃんの興味をひいて、各世代ごとに「この刺激はあかちゃんにとって良くないのでは」と問題視されることが続いているのです。たとえば、その昔絵本もダメと言われたときがあったらしいんです。

───そうなんですね! 今は、スマホを小さい画面で見るくらいなら、テレビを見なさい、と子どもに言ったりしていて、あれ?何かおかしいなと思うことがあります。

山口:もともと刺激的であかちゃんの目をひくものがその時代ごとにあって、それが進化していっているだけとも言えます。ただ、それぞれの問題というのはあって、タブレットや映像は、与えたままでお父さんお母さんが入ってくる余地が少ないことです。刺激的なものであるほど、手渡したまま放置した状態になってしまうということがあります。理想をいえば、あかちゃんに渡したものは、親が一緒にいて見本を示したり関わって使い方を教えることが必要なんです。そうやって、たとえば絵本なら絵本の使い方を覚えていくわけです。
そのようなやりとりがスムーズにできるために、お母さんがうまく使いこなせる、年齢にあった刺激がたっぷりある題材を選んで与えることができればいいんだと思います。もちろん、お母さんが題材を好きであることも大切です。

───なるほど。

山口:大人が絵本を選ぶとき、どうしても「将来こういう本を読んでほしい、こういう子になってほしい」という思い入れが入ってしまいますよね。でもあかちゃんの場合は、今、その子が興味を持っていて、その子が見える、使いやすい刺激という視点で選ぶことが大事です。
好きなキャラクターもありますが、そのキャラクターの絵本というだけでそればかり選んでしまうと、さまざまな刺激をたくさん届けることができなくなってしまうかもしれません。

───可能性を狭めてしまうかもしれないんですね。

山口:それから、親は自分が好きだった絵本、好きな絵本を選んでしまうものですが、人の記憶って1歳までは遡れないんです。せいぜい遡れて3、4歳。そうしたら3歳くらいの子に手渡す絵本は自分の記憶にある本や好みの絵本でいいけれど、それ以前のことは、自分の記憶には頼れない。目の前のあかちゃんに確認するしかないんですよね。
いろんな絵本を手に取って、どんなものを面白く見ているかな?と観察して選ぶのが、いいかもしれないですね。

───「あかちゃん絵本」というと、0歳から3歳までの絵本を指して呼ぶことが多いですが、その年齢の分け方ではとらえられない部分があるということですね。

山口:やっぱり1歳を境にがらっと変わります。10ヶ月くらいから、お母さんの表情を見て泣いたり笑ったり、自分の次の行動パターンを変えようとします。大人と同じ概念、社会性やコミュニケーション能力が1歳くらいで身についてきます。ようやく2・3歳になって、ことばの世界に足を踏み入れると、もう大人と同じ土俵の中にあるんですよ。
それと比べると0歳は、大人とは別世界を持っている人。まあ宇宙人と思ったほうがいいかもしれないですね。

───宇宙人ですか?!

山口:なぜ宇宙人かというと、脳が違うからです。まだまだ未発達で、わたしたちと同じ作りの脳を持っていないんです。私たち大人は、感覚世界と意味は一緒になっていて、出来事にいろんな解釈をしています。けれど、あかちゃんは、解釈なしに感覚をそのまま楽しんでいます。
人間が記憶を辿れるのは2歳くらいまでとお話しましたが、記憶はそれまでは消えてしまうんです。消えてしまう理由は、刺激をたくさん入れて神経細胞を増やさなきゃいけないから。記憶というものが作られる前に、感覚を受け取る神経細胞を増やす必要があるのです。

ひらぎ:ふりかえっている場合じゃないんですね。

───記憶が残らないとすると、刺激も経験も上書きされてしまうから、どんどん刺激をあげて更新していっていいんですね。

山口:むしろ刺激はたくさん受け入れなきゃいけない脳の状態なんです。視力を例にすれば、刺激を与えて発達させるということをしないといけないのです。とにかく感覚の刺激を何度も繰り返し受けることが、神経細胞を増やすためにとても重要です。

───あかちゃんというと、おだやかにおだやかに、過ごさせてあげるという考えも何となくあったんですが、それは違う…?

山口:それは、大人がそうしたいからですね。そうしないと子育てが大変だから(笑)。

ひらぎ:寝なくなっちゃう(笑)。

───刺激が強すぎるんじゃないかと親が決めてしまうのは良くないんですね。

山口:キラキラ、金色、ホログラムとかコントラストの強い色、光るもの……。あかちゃんは刺激が強いものがとっても好きです。大人とは違う世界を持っているのです。違う世界には、良い悪いはないですよね。自分たちの世界とは本当に違うんだというところを、大人が楽しめたらいいですね。

ひらぎ:すぐ終わってしまう貴重な期間ですもんね。お話を聞いて、宇宙人ということばにすごく合点がいきました。娘が0歳だったころ、神様といったら変ですけど、人間じゃない感じがしていました。あかちゃんて何の曇りもなく欲求がピュアじゃないですか。それはあかちゃんたちが意味世界に住んでいなくて、感覚のみで生きているからで、だから大人からすると、超越した存在に見えていたんだなと思いました。

───世界とのつながりかたが大人とは違うんですね。

ひらぎ:私たちはもう意味世界の住人ですが、もともとは誰もが宇宙人だったわけで、みんなが面白いと思うことの根底には、この感覚が残っているはずですよね。これからも自分の中の宇宙人の部分と対話しながら、理屈でなく楽しめる絵本を作っていきたいです。

山口:誰でも自分の中の宇宙人的な世界は、思い起こせばあるはずなので、そういう感覚を思い出しながらあかちゃんを見ると面白いかもしれないですね。

ひらぎ:今回お話をうかがって、解説をしていただいて、作品があかちゃんと繋がれたということがとても嬉しかったです。

───あかちゃんが絵本をどう楽しんでいるのか、「あかちゃんがよろこぶしかけえほん」シリーズにあかちゃんが夢中になる理由も納得しました!
最後に、絵本ナビ読者へ向けてメッセージをお願いします。

山口:小さなあかちゃんは動いてるものが大好きです。本を動かすことによって、絵本に興味がないなと思っていた子も、興味を持ってくれると思います。まずはお母さんが動かして、また一緒に動かして、楽しみをいろいろ見つけて、楽しんでみてください。

ひらぎ:動きにこだわって作ったので、あかちゃんのときは変化することを楽しんでください。おはなしの意味がわかるようになったら、親子で話しながら楽しんでもらえると思います。ぜひ楽しんでみてください。

───ありがとうございました!

インタビュー:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
文・構成:掛川晶子(絵本ナビ編集部)
写真:所靖子(絵本ナビ編集部)

ラボを見学させていただきました!

研究室では、3ヶ月〜8ヶ月のあかちゃんを対象として、視知覚能力の発達に関する研究を行っています。

この日の実験に参加しているのは6ヶ月のあかちゃん。 ブースの中にお母さんとあかちゃんが入って、画面の映像を見てもらいます。

画面に映るものが切り替わっていき、あかちゃんが何を見ているのかのデータを取っていきます。

研究室のホームページで「あかちゃん研究員」(協力研究員)を募集していて、 研究に参加されたあかちゃん、年間で1000人程度のあかちゃんの様々なデータが取られているんだそうです。

<山口真美研究室>
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/index.html

また、山口真美先生は、10代の子どもたちに向けて、こんな面白い書籍も出版されています。
「顔を素材として、バランスを崩しやすいジュニアの心を知る」という、大人もとても興味深い内容の一冊。発売以来、中学入試で数多く取り上げられているテキストでもあるそうです。
ぜひ、こちらもチェックしてみてくださいね。


岩波ジュニア新書 自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学
著:山口 真美
出版社:岩波書店


顔は心の窓です.魅力的な顔をしていると,よりよい人間関係が築けます.でもそれは,目鼻立ちの美しさではありません.では,「いい顔」とは何でしょう? なぜ人は顔が気になるのか,顔を覚えるコツはあるのか,第一印象は大切か,修正写真も「私の顔」なのか――「顔」にまつわるさまざまな疑問を,心理学で解き明かします.

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山口真美(やまぐちまさみ)

  • お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達学専攻修了後、ATR 人間情報通信研究所・福島大学生涯学習教育研究センターを経て、中央大学文学部心理学研究室教授。博士(人文科学)。日本顔学会、日本心理学会理事。新学術領域「トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―他文化をつなぐ顔と身体表現―」領域長。
    著書に、「赤ちゃんの視覚と心の発達」(東京大学出版会)、「赤ちゃんは顔をよむ」(紀伊国屋書店)、「自分の顔が好きですか?――「顔」の心理学」(岩波ジュニア新書)、「発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ」(講談社ブルーバックス)など。

    http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/
    http://kao-shintai.jp/index.html

ひらぎみつえ

  • 1977年石川県金沢市生まれ。東京大学文学部卒業後、広告制作会社勤務を経て絵本作家に。
    あかちゃんがよろこぶしかけえほんシリーズ『お?かお!』『あー おいしい!』『でんしゃ ガタゴト』『サンタさん どこにいるの?』(ほるぷ出版)など。絵本に、洗濯バサミが冒険するお話『せんたくばさみの サミー』(鈴木出版)などがある。

作品紹介

あーおいしい!
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
どうぶつダンス
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
ブルブルブルドーザー
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
あかちゃん みーつけた!
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
でんしゃガタゴト(新版)
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
お?かお!
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
クリスマスパーティーはじまるよ!
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
サンタさん どこにいるの?
作:ひらぎ みつえ
出版社:ほるぷ出版
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