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シリーズ最終巻。ツバメ号からはジョン、スーザン、ティティ、ロジャ。アマゾン号からはナンシイ、ペギイ、キャプテン・フリント。それにディックとドロシアのカラムきょうだいも加わって、これまで数々の冒険を乗り越えてきた仲間たちが勢ぞろいします。はたしてディックの見つけた鳥の正体とは? 子どもたちは鳥類研究家の魔の手から鳥を守りぬくことができるでしょうか? 手に汗にぎる感動作です。
この下巻を読んでしまったら、もう本当にこの先の『ランサム・サーガ』の物語は読めないんだと思うと、いろんな想いが込みあげてきますが、
そんなこといっても続きが気になるので、やはり読みたくなるのですよ!
上巻でディックが見つけた新発見は、イギリス諸島内で繁殖しないアビ類の「ハシグロアビ」が、(凪のために船が進まずたまたま立ち寄ったある島の半島で)どうやら夫婦で卵を温めているらしい巣があるところを目撃!
たまたま近くにいたジマリングを鳥類研究家だと思い込んで、情報を提供してしまったことから、物語は大展開していきます。
このシリーズでは子どもたちがたくさん登場しますが、ランサムは一人一人の個性をきちんと描き分けてくれています。
例えば、ロジャが意外に自尊心が高いところ(もしかしたら、この物語の過程で成長してきたからこそ出てきた性格なのかもしれませんが)を今回の『シロクマ号』で知ることが出来ました。もう、小さなAB船員のみそっかすではなくなっていたんですね。
いちばん年下だったからこそ、ロジャの成長が大きく感じられました。
また、スーザンは物語が進むごとに、みんなの“お母さん役”が板に着いちゃって、このままお嫁だって行けそうです。
諸島内の領地でシカ狩りをしている部族にも追われる羽目になってしまった一行は、
部族の追手と、ジマリング一行の追っ手をほんろうさせるため、ナンシーの考えた作戦を決行します。
1つはただの観光客を装った子どもたちの集団。もう1つは“ディック”はここにいますよ〜を思わせ、本当に「ハシグロアビ」が卵を温めている湖から引き離す役。
ディック役は本当はロジャのほうが背格好が似ているのですが、長距離を移動する可能性があるので、木炭で眼鏡を顔に書いたジョンが扮します。(この役、ジョンは結構楽しんでるようでした)
こういうアイディアはナンシーならではです!こういう子どもらしいのにどこか強引で大胆な行動が、読み手の子どもたちの胸を熱くするのではないでしょうか。
ドキドキしっぱなしの下巻です。最後まで楽しめます。
ランサム・サーガの特徴の1つとして、いつもわたしが感じていたのは、ラストシーンが大げさな大円団で終わらないところです。
とてもさりげない日常の一コマのようなやり取りで終わるんですよ。
なのに、ものすごく余韻が残ります。
この続きが、自然にどんどん流れていくような感じがいいのかもしれません。
作品は小学校の高学年くらいから中・高生の方々に特におすすめしたのです。
今回は「ハシグロアビ」というちょっと珍しい鳥のことが、おはなしのキーポイントになっています。
なので、鳥や自然界の生き物に興味のある人には特におすすめです。
そして、中高生以上や大人の読者の方には、後書きまでしっかり読んでもらいたいです。
訳者からの言葉や、この作品が大好きな人たちからの物語のエールや楽しいお話のポイントが綴られているので、要チェック!
ここを読んでから、また再読するのもありですね〜。
人生のうちで、10代でいる時期はほんのちょっとです。
いまの世の中、アマゾン海賊やウォーカーきょうだいのような冒険はなかなかできませんが、
この物語の中で、彼らと一緒に冒険の(疑似)体験できます。
ぜひぜひ、学生時代に一度は読んでほしい作品の1つです。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子20歳、女の子16歳)
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