むかしむかし、とある沼に、ちいさなカエルが住んでいました。
カエルの名前はリリパッド。
でも、みんなちいさな彼をバカにして、チビパッドだなんて呼んだりします。
でもリリパッドは、本当はこんなふうに呼ばれたいと思っていました。
ミドリの鎧を身につけた、誇り高く自由なカエル! 英雄『サー・リリパッド』!
お姫様のキスによって王子様になるカエルの童話を読んだリリパッドは、「それならぼくも!」とお姫様探しの旅に出ます。
巨人の洞穴、魔女の根城、閉ざされた塔……
お姫様がとらわれているかもしれない、数々の危険な場所を巡って旅するリリパッド。
冒険のかいあってついに、ドラゴンにとらわれたお姫様を見つけたのですが……
あれ?
そのお姫様、なんだか少しイメージとちがう?
おおきな世界と、ちいさな体。
ページのなかにちょこんと描きこまれたリリパッドと、彼のトレードマークであるピンクの羽が、とっても愛らしいんです!
前向きで勇敢、でも時々落ち込んで泣いたり、はずかしくって赤くなったり……
いきいきと表情の変わるリリパッドのことが、きっとすぐ好きになってしまうはず。
カラフルでおおきな世界を、ちいさな体でぴょんぴょん跳ねまわるカエルの奮闘が、最後までわくわくさせてくれる冒険物語です。
ところで、リリパッドが冒険の果てに出会ったお姫様。
ティアラにスカート、赤毛の三つ編みがかわいらしい女の子です。
しかしよく見れば、ハイカットのスニーカーを履いて、腰には剣をたずさえているではありませんか。
実は彼女、同著者の前作『とんでもプリンセスとドラゴン』の主人公である、プリンセス・スー!
プルンセス・スーの活躍を知っている読者であれば、この出会いがシンプルにめでたしめでたしとはならないことにもすぐ気づくわけですが……
おてんばお姫様と出会ったリリパッドは、果たしておおきな体を手に入れることができるのでしょうか?
(堀井拓馬 小説家)
続きを読む