クリスマスがやってくる!
クリスマスがやってくる!
10歳のエルッキは十人兄弟の真ん中っ子。
クリスマスを前に、クリスマスのことを思うと幸せで胸がはちきれそうになり、大きな声で歌いながら、家路へと急ぎます。
けれども家に帰ると、いつもは家族の会話でにぎわい、温かい雰囲気の台所がしんとしています。いったい何があったのでしょう?台所にはいつも通り兄弟たちがいっぱいいました。しかし、お母さんがゆりいすにすわって両手で目をおおい、お父さんが、お母さんの肩をやさしくたたいていたのです。年上のアイリとセイマは抱き合って泣いていました。「どうしたの?」と聞くエルッキに、兄のミッコが答えます。
“一番目の兄のマッティがのっている船になにかが起こり、行方が分からなくなっている”と。
「マッティがいなければ……クリスマスもなにもないでしょうに!」と思わずつぶやくお母さんと、しずみこんでいる兄弟たちを前に、エルッキも「とびきりすてきなクリスマス」になんかなりっこない、と一度は投げやりになってしまいます。しかしとつぜんすばらしいことを思いつき、ひみつの行動をはじめるのです。
はたして、エルッキが思いついた名案とは?
エルッキの家族は、「とびきりすてきなクリスマス」を過ごすことができるのでしょうか。
エルッキの家族は子どもが十人もいる大家族。
あまりお金がないので、特別なプレゼントを買って準備することはできません。「クリスマスは、プレゼントをもらう日だけの日じゃない。イエスさまのお誕生日なんだよ。だから、だいじなのは、プレゼントをあげたいとおもう心なんだ」というお父さんのセリフが心にぐっと響きます。
ストーリーの面白さと温かさもさながら、クリスマスの伝統的な楽しみ方を知れるのも本書の大きな魅力。同時に、クリスマスにおける心の在りようや、本当に嬉しい贈り物とはどんなものかということなど、豊かなものが読む子どもたちの心の中にもじんわりとしみわたっていくような素敵な物語です。こんな豊かなクリスマスの在りようを子どもも大人もあらためて見つめ直してみたいと思わせられるのです。
原作は40年も前に書かれているそうですが、今読んでも全く色褪せない魅力がたっぷり。『にぐるまひいて』や『ルピナスさん』で有名なアメリカの絵本作家バーバラ・クーニーさんによる挿絵も味わい深く、物語をいっそう素晴らしく彩っています。このたび岩波少年文庫のラインナップに仲間入りしたことで、多くの子どもたちにさらに読み継がれていくことでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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