「光あれ」
神のそのひとことからはじまる、七日間の創世。
アダムとイブが食べた禁断の果実。
すべてを無に帰す大洪水とノアの箱舟。
天へ届けと伸び上がり、神の怒りにふれたバベルの塔。
海を割り、十戒をさずけられた預言者モーセ。
そして、イエスの起こした数々の奇跡。
なんとなく聞いたことはあるけれど、くわしくは知らないという方も多いのでは。
本作は聖書に描かれた物語を、再編成した一冊です。
主だったエピソードをシンプルにまとめ、全体を俯瞰しやすいひとつながりの物語として描き、聖書世界を楽しみながら知ることのできる作品になっています。
そして、そんなあらたな聖書に色を与え、景色を与えたのが、国際アンデルセン賞受賞画家リスベート・ツヴェルガー。
オーストリアの絵本画家で、オズの魔法使いや不思議の国のアリス、おやゆび姫といった古典童話の挿絵は、世界的に高く評価されています。
夢の景色を想わせるような、独特の味わいを持つツヴェルガーの絵。
それが本作では聖書という骨組みを得て、より神秘的でおごそかな空気をまとい、作品世界を彩っています。
キリスト教の聖典という堅苦しい先入観は抜きに、世界的に有名なひとつ物語として、そして、ツヴェルガーの画集としても楽しめる作品です。
聖書の物語に興味はあるけれど、原典を読むのは少しハードルが高い。
とても有名だから読んでみたいけど、キリスト教徒じゃないからちょっと身構えてしまう。
そんな人にこそ手に取って読んでほしい一冊です
(堀井拓馬 小説家)
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