「おばあちゃん!」
「はなちゃん、元気だった? 大きくなったねえ。」
ひとり暮らしの家を工事する間、おばあちゃんがはなちゃんの家で一緒に暮らすことになりました。
いつもにこにこ顔でほっとするにおいのするおばあちゃん。はなちゃんはおばあちゃんが来てくれて嬉しくて仕方ありません。おしゃべりが大好きなおばあちゃんのおかげで、家族みんながいつもよりたくさん笑っています。
でも、はなちゃんには少しだけもやもやすることがありました。
おばあちゃんはよくはなちゃんのすることに対して「でもね」と言って注意するのです。
おばあちゃんの言うことが正しいのは分かってる。でも……。
そんなもやもやを抱えていたある日、仲良しの友だちが遊びに来ます。帰り際、友だちにあることを注意したおばあちゃん。これには我慢できなくなったはなちゃんは、「おばあちゃんなんて、きらい!」と言ってしまうのでした。
お話から伝わってくるのは、おばあちゃんの優しさとたっぷりの愛情。そしてはなちゃんがおばあちゃんを大好きだという気持ちです。でもそれでも我慢できないことやすれ違ってしまうこともきっとあるでしょう。思わず出てしまった言葉や行動に対して「ごめんね」のひと言がどうしても言えない。そんなはなちゃんの気持ちの動きがとても丁寧に描かれています。作者のささきみおさんが描かれた挿絵も優しく、とくに、ひまわりの刺繍が入ったピンク色のきんちゃくが印象的です。
第70回読書感想文コンクール課題図書の小学校低学年の部にも選定されている本書。「ごめんね」についての思いは、相手がおばあちゃんでなくても、なにか低学年の子どもたちなら心に引っ掛かる体験があるのではないでしょうか。お話を通して、自分の体験を思い起こしてみる。それは一歩深い読書への入り口になるのではないかと思います。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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