もくべえは木炭自動車。ガソリンではなく木炭を焚いて走る車です。
東京の下町の修理工場に、もくべえを迎えにきたのは、カウボーイのおじさん。
これから車で混みあう都心を抜け、ある場所へ向かうのです。
もくべえとおじさんは出発しました。
おっと、手順はこうです。(すぐには発車できません。)
まずおじさんは、車体のよこについている、へんてこな縦長の釜に木炭を入れて火をつけます。
それから釜の横についている送風機をぐいぐいぐいとまわします。
しばらくすると釜のエントツからもくもくけむりがでてきて、けむりが少なくなると準備OK。
運転席にカウボーイのおじさんが座り、修理工場のおじさんが車の正面にあるクランク棒をちからいっぱいまわします。すると……
うん がるうん
うん がるうん
ぶるぶるぶる ぶるるぶる ぶるるるぶる
……ようやくエンジンがかかるのです!
古くて早く走れないもくべえを、道路で会うたくさんの車がバカにして笑います。
子どもたちも「へんなくるま!」と言いますが、ガソリンがなくても走ることをおじさんが説明すると「べんりだあ!」と感心しちゃうのです。
のんびりはしって、なぜいけない。ばが――ばがばが――
もくべえの最大速度は40キロまで。急坂は、前向きではのぼれません。
前がダメならうしろがあるさ、と、バックで坂をのぼりきったもくべえがたどりついた場所は……?
もくべえが必要とされるのにはちゃんと理由があったのですよ!
読み終えて、なるほど!と納得できるストーリーの絵本です。
もくべえが、車でいっぱいの道路を走り抜けていく様はスリル満点。
見返しにはもくべえの構造図や断面図が描かれています。
一見不便なしくみの車とつきあうおもしろさや、「ちょうどよい居心地よさ」を考えさせてくれるのが、この絵本のすばらしいところ!
絵は、あの絵本史に残る『きかんしゃ やえもん』の絵を描いた岡部冬彦さん。
文は、翻訳や著作で数多くの名作をのこした渡辺茂男さん。文章量が多めでも声にだして読みやすいです。
子どもはもちろん、大人にもおすすめですよ。
「もくべえ」という可愛らしい名前が気になったら、ぜひ手にとってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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