舞台はむかしむかしの大昔。山がドドド……と噴火して、その時生まれたのがアンキロサウルスの赤ちゃん。だけどひろーいところに一人ぼっち。とぼとぼ泣きながら歩いていると、出会ったのが……彼の何倍も何十倍も大きな大きなティラノサウルス!!
「ガォーー!ひひひひ、おまえうまそうだな」
大変、アンキロサウルスの赤ちゃん、ピンチです。ところが、ティラノサウルスが飛びかかろうとしたその瞬間。
「おとうさーーん」
アンキロサウルスの赤ちゃんがティラノサウルスの足もとにしがみついたのです。一体これはどういうこと…? 物語はここから急展開。草食恐竜と肉食恐竜の思いもよらない二人のやり取りが始まっていくのです。
迫力の恐竜の姿に緊張感を持ちながら、それでも読者はこのティラノサウルスのことを心底恐いと思うことはできません。なぜなら、否応なしに父性に目覚めていってしまう様子が可笑しくも切なく、親近感すら抱いてしまうから。ひたすら無邪気な心を目の前にすると、例え他人だったとしても、こんなに深い愛情を感じてしまうものなのか。
わかりやすく明解でユニークな絵と、しっかりとしたストーリーがあるからこそ、読み終わった後には子どもは子どもなりに、大人は大人として、それぞれがしっかりとその感想を受け止めることができるのでしょう。それが、シリーズを通して読み続けられている、宮西達也作品の人気の秘密なのかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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