お話だけを読むと、何とも物悲しいクリスマス物語です。
これを人生と重ね合わせるといたたまれなくもなってきます。
そんな物語をせなけいこさんの絵でくるまれると、幸せって何だろうと話の内容が浄化されてきた感じがしてきました。
森で大きくなって伐り倒されて行くもみの木は、船のマストになって世界を巡るといいます。
これが幸せでしょうか。
クリスマスツリーとしてクリスマスを演出したもみの木は幸せでしょうか。
クリスマスを終えた後、もみの木は切られて燃やされてしまうのです。
これが幸せでしょうか。
きっともみの木は森で育ち続けているのが一番幸せなことには違いありません。
せなけいこさんは、物語の非情さを受けとめながら、せなさん自身の世界でマイルドに描いています。
今、大人としてこの物語を読む時、マストになったもみの木も、クリスマスツリーになった木も、本人が納得さえしていれば、幸せなのではないかと思いあたるのです。
自分たち人間はいつか人生の終わりを迎えます。
その人生で、何か自分の幸せだった時を抱きしめながら死んでいきたいと思います。
何事もなかった人生は虚しすぎます。
せなさんはもみの木の輝いていた時も、大切に描いています。