子どもから大人まで幅広い年齢の読者に大人気の絵本作家・宮西達也さんの新作、『おかあさん だいすきだよ』が発売となりました!
今回の絵本は、子どもの目線から日常をとらえて、お母さんがホロリと泣ける作品になっています。発売を記念して、静岡県三島市にある宮西さんのアトリエにお邪魔しました。
やんちゃ坊主だった子ども時代のエピソードや、ご両親の思い出など、カナガキ事務局長とのスペシャル対談をお楽しみください。
●ついつい口にしがちな「早くしなさい」という一言、「こう変えたらどうかな…?」と思ったことが、この絵本のきっかけです。
カナガキ:『おかあさん だいすきだよ』、さっそく読ませていただきました。『あなたが とっても かわいい』の大ファン、女優の紺野美沙子さんにもお送りしたら、さっそくFacebookで「オススメです。泣ける!」と紹介してくださっていて、400人くらいの方が「いいね!」を押していましたよ。(/reviewcontest/roudokuza_201204/)
宮西:ありがとうございます。皆さんに読んでいただけてうれしいです。 カナガキさんは読んでみてどうでしたか?
- おかあさん だいすきだよ
- 作・絵:みやにし たつや
- 出版社:金の星社
おかあさんね あなたが ずっと ずっと ずーっと だいすきだよ。 ぼくはお母さんが大好きだけど、お母さんは「早くしなさい」「ぐずぐずしないで」「何回言えばわかるの」って、ぼくをしかってばかり。優しくしてくれたら、もっと好きなのに。子どもの気持ちに寄り添った子育て応援絵本。
カナガキ:ぼくは娘を持つ父親なのですが、男の子を持つお母さんには、ドンピシャで心に響くだろうな…と思いました。この『おかあさん だいすきだよ』は『あなたが とっても かわいい』(金の星社)の続編なのでしょうか?
宮西:ぼく自身は全然違う発想から生まれたおはなしとして作りました。でも、母と息子のやり取りだったり、語り口調だったり…というところは同じ。どちらもお母さんに読んでほしい絵本です。
カナガキ:宮西さんの作品の中には、『にゃーご』(鈴木出版)や『ふしぎなキャンディーやさん』(金の星社)など、子どもがワクワクして楽しむ絵本と、今回の『おかあさん だいすきだよ』の様に、お父さん、お母さんがホロリと涙を流すような作品の2タイプがありますよね。
宮西:そうですね。お母さんたちはわが子のことがとても好きなのに、しつけだとか、良かれと思って出てしまっている言葉は、物語の前半部分に出てくるようなネガティブな発言が多いと思うんですよね。それをちょっと変えるだけで、全然違うんだよ…ということを伝えたいと思ったのが、この絵本が生まれるきっかけでした。
カナガキ:それを、「言ってはいけませんよ」って否定してしまうのではなく、「こう言いましょう」と上から教えるのでもなく、男の子の言葉で「……っていってくれたら ぼくね もっと おかあさんのこと だいすきだよ」って伝えているところが、ハッと気づかされる感じで新しいなと思いました。
宮西:やっぱり、娘と父親、息子と母親の関係って、同性の親子とは違った特別なものがあると思うんです。お母さんは、特に息子のために…とより強く否定的な言葉を発してしまいますし、息子は息子で困らせるつもりはなくても、やんちゃをしたい本能がありますよね(笑)。お父さんと息子だとまた違った風に子どもと関わるんじゃないかな…。
カナガキ:お父さんだと、もっとやんちゃするというか、「いいからいいから」「もっとやっちゃえ」とか言っちゃいますよね、きっと(笑)。
●言葉や表情、色の使い方など細かい部分にまでこだわって描きました
カナガキ:「はやくおきなさい!」や「いそぎなさい!おくれちゃうでしょ」など、絵本の中に登場するお母さんのセリフが本当にリアルに感じたのですが、何か参考にしたものなどありましたか?
宮西:育児雑誌や本に載っている「お母さんが使ってしまう否定的な言葉」を調べたりしました。「早くしなさい」というのは、本当に日常的に使われていて、それが普通の叱り方になっているお母さんもいると思うんです。僕も小さいころ、母によく言われていましたし…。でも、それが普通に口から出てしまっていることに気づいてほしいと思ったんです。
カナガキ:それを例えばお父さんに言われるとカチンとくるけれど、絵本を通して客観的な形で見せられるから、ハッと気づくんですね。
否定的な言葉の言い換え…というか、男の子が「もっとお母さんのこと大好き」になるポジティブな発言が、この作品ではかなり重要ですよね。本当にちょっとしたニュアンスの違いだと思うんですが、「そう言えばいいんだ!」と、すぐにやってみたくなる言葉ばかりで…。この言葉を考えるのは大変ではなかったですか?
宮西:否定的な言葉って出やすいですよね。テレビの前から離れないわが子に、「優しく“あんまりテレビ見ちゃだめよ”と言いましょう」と伝えても、きっと響かない。でも「今日は一緒にお風呂に入りましょう」なら、「あ、これ言ってみようかな…」と思ってもらえる。リアリティがないと絵本って成立しないので。気恥ずかしい話にならない様、肯定的な言葉はすごく考えました。
カナガキ:手をグーにして振り上げたり、上から覆いかぶさるように迫っていたり、怒っているときのお母さんのポーズもすごい迫力ですよね。
宮西:かなり高圧的になっていますよ…というのを客観的に見てもらいたいと思って描きました。そればかりだと、きつい印象になりすぎるので、答えのページでは、子どもと目線を合わせていたり、子どもとの距離を近くしたり、より温かさを感じられるように工夫しました。
カナガキ:この、顔が見えないページなんかは、どんな表情をしているのか考えるだけで怖くなりますね。
宮西:今回、登場人物はお母さんとぼくの2人だけなので、構図で印象が大きく変わると思って、絵の展開やページ割など何度も考えました。1日のスケジュールを追って紹介しようか、それともお母さんが叱りそうなシチュエーションをランダムに紹介しようか…とか。