うごく! しゃべる! ぬりえーしょん 恐竜 (小学館集英社プロダクション)
お子さまの塗ったぬりえが、アニメーションになる!フランス生まれの画期的なぬりえシリーズ!
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インタビュー
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2023.01.12
『モモ』や『はてしない物語』など、人々の心に刻まれる名作を生み出した児童文学作家、ミヒャエル・エンデ。彼の死後まとめられた遺稿集『だれでもない庭 エンデが遺した物語集』(岩波書店)の中に、長編小説の断片として収録されたのが「盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインと従者のチビクン」でした。わずか3章で絶筆となったこの物語は約20年後、同じくドイツ出身の児童文学作家 ヴィーラント・フロイントにより、エンデの遺志を継いだ物語として完成されました。
『ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』は、2019年の発売以降、欧州各国で翻訳され、さらにミュージカルとして上演されるなど注目を集めています。日本での翻訳出版にあたり、表紙をはじめ、作中にちりばめられた約60点の挿絵は、注目の画家・junaidaさんによるものです。発売後すぐに重版が決定するなど、各方面で話題になっているこの作品について、小学館の担当編集者にお話を伺いました。
出版社からの内容紹介
暗黒の中世のとある真夜中。嵐の中を進むあやつり人形劇団の馬車から少年クニルプスが姿を消す。彼が向かった先は、誰もがおそれる大悪党、盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインの城だった――。晩年のミヒャエル・エンデがのこしたふたりの物語が、美しい加筆とともにふたたび動き出す。「悪」と「おそれ」、その真の意味を探しもとめる、めくるめくメルヘンの世界。小学高学年から。
この書籍を作った人
1929年生まれ。ドイツの作家。ドイツ南部の町ガルミッシュ-パルテンキルヒェンに生まれる。画家エドガー・エンデを父に持ち、演劇活動のかたわら、さまざまな戯曲・詩・小説を生み出す。『ジム・ボタンの機関車大旅行』が1961年、ドイツ児童文学賞を受賞。続編の『ジム・ボタンと13人の海賊』とともに児童劇やテレビの放送劇となり、一躍人気作家となる。『モモ』『はてしない物語』のほか、『岩波少年文庫 魔法のカクテル』『まほうのスープ』(以上、岩波書店)など、著作多数。1995年逝去。
この書籍を作った人
1969 年、ドイツ生まれ。児童文学作家、ジャーナリスト。10 歳の頃に『はてしない物語』を読み、以後エンデ作品を愛読するように。2003 年に発表した『Lisas Buch』でバイエルン州芸術振興賞を受賞。2018 年に出版した『Krakonos』を出版、同作がドイツ児童文学賞にノミネートされる。
この書籍を作った人
ロンドン生まれ。翻訳家。ケルンのギムナジウムを経て、ボン大学を卒業。1995 年以降、ベルリン在住。主な近訳は『トーマス・マン ショートセレクション:道化者』『世界名作ショートストーリー:ヘルマン・ヘッセ』(ともに理論社)など。
この書籍を作った人
ジュナイダ/画家。1978年生まれ。Hedgehog Books代表。『HOME』(サンリード)で、ボローニャ国際絵本原画展2015入選。第53回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞(児童書・絵本部門)を『Michi』(福音館書店)が受賞。翌年に同賞を『怪物園』が受賞。ミュンヘン国際児童図書館発行の「ホワイト・レイブンズ-2021」に『怪物園』が入選。最新刊に『EDNE』(白泉社)、近著に絵本『Michi』『の』『怪物園』『街どろぼう』(いずれも福音館書店)、画集『UNDARKNESS』(Hedgehog Books)など。
――『ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』は300ページ以上あり、とても重厚な物語だと感じながら読みはじめました。しかし、誰もが恐れる盗賊騎士になろうと苦心するロドリゴ・ラウバインや、盗賊騎士の従者になるためにラウバインの城に押しかける、怖いもの知らずの少年クニルプス、彼らの行動を俯瞰して物語の先を読もうと飛び回る賢いオウムのソクラテスなど、登場人物がとても魅力的で、どんどんおはなしの世界に引き込まれていきました。はじめて読んだとき、どのように感じましたか?
第1章から最終章にいたるまで、作品全体にエンデの気配が漂っていておどろきました。どこまでがエンデの手による原稿でどこからが加筆なのか、判別するのが難しいほどフロイントの加筆に引き込まれたのです。まさに、私たちが親しんできたエンデの世界だ! と胸が躍ったのを覚えています。
もうひとりの著者であるヴィーラント・フロイントはベルリン児童文学賞にノミネートされるなど実力のある作家で、彼は幼少期の読書体験からエンデをとてもリスペクトしているんです。そのため、本書でもエンデに対する理解の深さが随所に表れています。物語の構成から言い回しまで、ずっとエンデがそばにいるかのような印象を受けました。読者のみなさまからも「加筆にエンデらしさを感じる」という声がたくさん届き、うれしいです。
私が特にエンデらしさを感じたのが、彼が愛しつづけた「演劇」のような空気です。冒頭で姿を消す主人公クニルプスと、その行方を推理しながら追いかける盗賊騎士の一行、そしてひと癖もふた癖もあるほかの登場人物たち。それぞれが勘違いを重ねながら、お話は取り返しのつかない方向へどんどん引っ張られていきます。その奇妙ななりゆきのせいで、みんなは大いに苦しむのですが、読者である私たちは、それぞれが勘違いしていることを知りながら読み進めます。それはまるで、舞台の上で起こる喜劇を眺めているよう。本を開きながら、登場人物たちが体験している別の物語を読んでいる。言葉にするとおかしいですが、そんな読書体験で、あっという間に読み終えていました。
――この作品の翻訳を手掛けたのは、トーマス・マンやヘルマン・ヘッセなどを訳されている木本栄さんですね。翻訳作業で大変だったのはどういったところでしょうか。
まずは遺稿と加筆、それぞれの原稿をつなげる作業です。フロイントの原稿には「エンデだったら続きをどうするのか?」という視点が詰まっていて、だからこそ私たちはエンデらしさを感じ取れるのですが、それはつまり、フロイントもエンデに合わせて自らの原稿を翻訳していたということです。著者ふたりの意図を汲みながら、ひとつの物語として日本語に移し替えていく。それはたいへんな作業だったかと思います。
それから、「会話文」には時間をかけていただきました。なんといっても、この作品の大きな魅力のひとつは会話の面白さです。魅力的で癖のある登場人物たちの掛け合いには、生き生きとした言葉が求められます。その点、木本さんがキャラクターたちの特徴を細かくつかみ、試行錯誤を繰り返してくださったおかげで、会話のおかしみも目一杯たのしんでいただける内容になっていると思います。
――ミヒャエル・エンデの遺稿が新たに一冊の物語としてよみがえったという、ファンが待ち望んでいた話題に加えて、本書の表紙と挿絵を注目の画家であるjunaidaさんが手がけたということも、とても注目を集めていると思います。junaidaさんといえば、ミヒャエル・エンデの名作『鏡のなかの鏡―迷宮―』をオマージュした作品集『EDNE』(白泉社)を出版されるほど、エンデに対する強い思いをお持ちの画家さんだと思います。本作ではどのような絵が見られるのでしょうか。
カバーに描かれているのは、主人公・クニルプスが真夜中に飛び出した馬車です。この絵をみているだけでも、物語が始まっていく予感がありますね。本書では大小含めて60点以上の絵が描かれています。嵐が吹き荒れるおそろしい森や、不穏なあやつり人形たち、行進する騎士の一団に、じめじめした魔術塔の地下……どれもエンデたちの物語に奥行きを与えてくれる、想像力に満ちた絵です。これだけたっぷりとjunaidaさんの絵が見られるのも、本書の魅力です。さらに、この本では黒のほかに、青、赤、茶色の1色刷りで挿絵が楽しめるんです! 絵のすばらしさはもちろん、絵を最大限に活かした美しい装幀にも注目していただきたいです。
実は、世界各国で出されている翻訳版はどれも原書と同じ絵なのですが、日本版だけ特別にjunaidaさんの絵が入っています。それはドイツの権利者との交渉の中でjunaidaさんの絵を見せたところ「junaidaさんに新しく挿絵を描いていただきたい」と言ってもらえたからなのです。エンデの作品と長らく関わってきた方々にとっても、エンデの世界とjunaidaさんの絵には何か共鳴するものがあったのでしょう。では、なぜjunaidaさんならばOKだったのか。ぜひ本を開き、絵をみていただきたいです。
――絵本ナビユーザーは0歳のお子さんを持つパパママから、60代以上のおじいちゃんおばあちゃんまで大変幅広いのですが、絵本ナビユーザーの皆さんに、『ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』のオススメポイント、メッセージをお願いします。
この物語が追求しているテーマは「おそれ」と「悪」です。子ども、大人を問わずだれもが内に秘めるこのふたつが、いったいどんなものなのか。クニルプスとロドリゴ・ラウバインは、エンデが用意した奇妙な舞台の上でおたがいに成長しながら、その真の意味を理解していきます。ぜひ読者のみなさまにも、演劇を客席から眺めるような心持ちで、かえってきたエンデの世界を体験していただけるとうれしいです。
文・構成/木村春子