どろぼうジャンボリ
- 作:
- 阿部 結
- 出版社:
- ほるぷ出版
絵本紹介
2025.07.11
みんなが眠る夜、ジャンボリは仕事にとりかかる。それはジャンボリにとって、とっても大事な宝物。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『どろぼうジャンボリ』。国内外で注目を集める絵本作家阿部結さんが手がけるはじめての絵童話、どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
ある町に住む風変りなどろぼう、ジャンボリ。顔を見られないよう、いつもごみ箱をかぶっているジャンボリの盗むもの、それはいったいなんでしょう?
答えは「てがみのたね」。みんなの家のごみ箱にひっそりと捨てられたそれらは、誰かに手紙を出そうと何度も書いた下書きや、出すのをやめてしまったもの。そこには、みんなの「はだかんぼうの きもち」がつづられているのだと、ジャンボリは思うのです。たっぷりじっくり味わったあと、心に残った言葉を胸に、ぐっすりと昼すぎまで眠るのです。
けれどある日、事件は起こります。町から「てがみのたね」がきえてしまったのです。一枚たりとも見つからないのです。町には「おてがみ禁止令」の立て看板。新しい町長が町の人から手紙をもらえないのだと怒って出した命令なのです。なんてこと!!
「いけない いけない。このままじゃ いけない」
しぼんだ心をひきずりながら町を出ていったジャンボリのある行動が、町の人の心に小さな火をつけます。それは……。
町に起こった奇跡を絵童話にして、3つのお話でユーモアたっぷりに綴られたこの物語。
手がけられたのは、国内外で注目を集める絵本作家阿部結さん。小さなコマ割りの絵から、隅々まで見応えたっぷり見開きの絵、カラフルな手紙や町の人の表情まで。豊かで丁寧な表現は、小さな子どもたちから大人まで夢中にさせてくれます。
「てがみのたね」、なんてあたたかな言葉でしょう。誰かにとっての大切な気持ちは、こんな風にさり気なくどこかに存在し、本人でさえ気づかなかったとしても、かみしめている人がいるのかもしれないのです。自然に芽生えてくる気持ちや言葉を一方的に禁じてしまった時、世界はどうなってしまうのでしょう。それぞれの視点や立場から、みんながそれぞれ考え続けていけるといいですよね。
渡せた手紙のまわりには
そういえば最近書いた手紙は……家を出る時の息子への伝言くらい? それでも何度か失敗しては捨てているはず。あの時はなんでやめたのかな、大した内容じゃないのにね。もっと思い返せば子どもの頃、母が思いつきでたまに書いてくれた伝言メモが嬉しくて仕方がなかったから、私もたまに息子に書いていたのでした。こんな風に、渡せた手紙のまわりには、思っている以上に色々な思いや出来事が重なっているのかと思うと、世界がまたちょっと違って見えてくるのです。
この書籍を作った人
1986年、宮城県気仙沼市生まれ。美術教師であった画家の父の影響で、幼少のころから絵に親しんで育つ。パレットクラブスクール、あとさき塾にてイラストレーションと絵本制作を学ぶ。書籍装画や演劇の宣伝美術などを数多く手掛ける。イラストレーションの仕事に、『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』(佐藤健寿/ 著 朝日新聞出版)、『サラリーマンのごちそう帖』(藤枝暁生/著 朝日新聞出版)、絵本の作品に『あいたいな』(ひだまり舎)などがある。東京都在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。